(2023/5/25 05:00)
コストの増加分を取引価格に上乗せする「価格転嫁」が不十分だ。コスト増加分の4割以上を転嫁できた企業は全体の半数程度にとどまり、コスト全額を転嫁できた企業は数%に過ぎない。中小企業は2023年春闘で3%台の高い賃上げ率を回答しているが、価格転嫁が十分であればもう一段の賃上げが可能だったのではないか。政府・経済団体はこれまで以上に取引適正化を後押しし、受発注企業が適正に利益を分かち合う共存共栄の関係を築いてもらいたい。
日本商工会議所の4月調査によると、78・2%の企業が発注企業と価格転嫁の協議を実施しているものの、コスト増加分の10割を転嫁できた企業はわずか5・8%、4割以上を転嫁できた企業は55・9%にとどまる。2月調査の53・5%から多少は改善したものの、不十分な状況にあると言わざるを得ない。
別の調査では、半数程度の企業が原材料費の高騰分を価格転嫁できているものの、人件費やエネルギー価格の上昇分を転嫁できたのは3割程度との結果もある。賃上げや電気代の値上げ分も含め、取引価格に十分に転嫁することが求められる。
発注側の経営者が受注企業(下請け企業)との取引適正化を宣言する「パートナーシップ構築宣言」の登録企業は2万4000社を超える。経団連、日商、経済同友会の経済3団体は、同宣言への参画と同時にかけ声倒れにならぬよう順守を会員企業に呼びかけている。同宣言の意義を理解し、不十分な価格転嫁の状況を改善したい。
連合の23年春闘集計結果(8日時点)によると、全体の賃上げ率は3・67%と前年同期の2・10%を大きく上回る。従業員300人未満の中小組合も3・35%(前年同期2・02%)に達しており健闘を評価したい。
中小企業は原材料価格の高止まりや実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の本格返済を控えるものの、人手不足を背景に賃上げせざるを得ない側面がある。持続的な賃上げが可能な生産性向上はもとより、価値創出に軸足を置いた戦略により価格転嫁力も高めていきたい。
(2023/5/25 05:00)
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