社説/骨太の方針(上) “2つの財源” 国債依存回避を

(2023/6/15 05:00)

政府は16日にも経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定する。少子化対策や東アジアの安全保障の重要性を訴え、先送りできない重要施策を推進するものと評価したい。ただ少子化対策と防衛費の増額を賄う財源を確保できていない。歳出改革には限度があり、最終的には将来世代の負担となる国債が増発される懸念が残る。税制の見直しも含めて恒久財源を確保し、日本が直面する歴史的変化に対応したい。

少子化対策に集中して取り組む3カ年の「加速化プラン」には年3兆円台半ばの追加予算が必要だ。岸田文雄首相は社会保障分野の歳出改革で財源を捻出したい意向だが、診療・介護報酬の見直しやデジタル化によるコスト削減をどこまで実現できるかは危うさが残る。人手不足の医療・介護分野はむしろ人件費の引き上げが求められる。

社会保険料の上乗せも与党内に反発があり、議論を年末に先送りした。子育て世代にも負担増となり、少子化対策の効果が減殺されかねない。どこまで実現するか不透明感を拭えない。

岸田政権は少子化対策の財源について、有権者の痛みを伴う消費増税を早々に封印した。財源不足はつなぎ国債で賄い、恒久財源は28年度までに探すという。結局、国債依存の財源確保となりかねない。政権は全世代で広く負担する消費税も選択肢に残し、税と社会保険料のベストミックスを模索したい。

防衛費も増税の額が未定で、実施時期も「24年以降」を「25年以降」に先送りする。27年度までの5年間に必要な14・6兆円の追加財源は歳出改革や剰余金、国有地売却益、増税で賄う。だが増税は与党内に反発があり、東日本大震災の復興予算の財源「復興特別所得税」を転用する考え方も無理がある。

少子化対策と防衛費の“二つの財源”問題。いずれも国債に依存せず、恒久財源を確保するのは政権の責務である。衆院解散・総選挙を見据えてか、有権者の負担増となる財源問題は先送りされたが、政権は年末まで審議を尽くし、国民が納得する解を導き出してもらいたい。

(2023/6/15 05:00)

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