(2023/6/16 05:00)
岸田文雄政権が中長期の視点で、どこまで財政健全化に取り組むかを注視していきたい。
歳出構造をコロナ禍前の平時に戻し、2024年度には政府の財政健全化目標を点検・検証するという。16日にも閣議決定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込む。少子化対策や防衛費増額など歳出圧力が強まる中、岸田政権は厳しい財政事情と正面から向き合い、現実的な健全化への道筋を示してもらいたい。
政府は21年度までの3年間で累計約94兆円のコロナ関連予算を計上し、2割の約18兆円が未執行だった。規模ありきの予算編成だったことをうかがわせる。経済が正常化しつつある中、野放図な歳出構造を是正するのは当然である。
骨太方針の原案によると、歳出構造を平時に戻し、財政出動も潜在成長率の引き上げや社会課題解決に重点を置くという。構造的賃上げやデジタル化、脱炭素化などの社会課題の解決を企業成長に結び付ける形で、日銀が掲げる安定的な2%の物価上昇目標を早期に達成したい。
内閣府の1月の試算によると国・地方の基礎的財政収支(PB、プライマリーバランス)は足元の1%に満たない潜在成長率で推移すれば32年度になっても赤字から脱しない。少子化対策や防衛費の財源も担保できておらず、財源を国債に依存する事態になれば財政がますます悪化することに留意したい。
歳出改革も欠かせない。全世代型社会保障に転換し、全ての世代が支払い能力に応じて制度を支え、現役世代の負担軽減で分厚い中間層を形成する必要がある。デジタル社会に対応した行政サービスで政府のコストも軽減したい。トラブル続きのマイナンバーカードの轍を踏まず、人工知能(AI)の可能性も模索し歳出抑制に努めたい。
デフレ脱却に道筋が付けば、日銀は金融政策を正常化し、政府に財政健全化を促す効果も期待できる。日銀が国債を大量購入しなければ、政府は安全な国債の受け入れ先を失う。政府が財政規律を順守する上でも、金融政策の正常化が待たれる。
(2023/6/16 05:00)
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