社説/通常国会21日閉幕 60法案ほぼ成立も重い課題残す

(2023/6/19 05:00)

第211通常国会が21日に会期末を迎える。政府が提出した60法案は先週末にほぼ可決・成立した。ただ脱炭素や産業支援に資する法制の具体化は評価できる一方、少子化対策や防衛費増額に向けた財源確保は年末に議論を先送りした。政権の責務として、残された重い課題の審議を尽くし、国民が納得する結論を導き出してもらいたい。

原子力発電所の60年超の稼働を可能とする法案が可決・成立した。脱炭素と電力の安定供給を両立する政策転換と評価したい。「原則40年、最長60年」の枠組みを残しつつ、原子力規制委員会の審査などで停止した期間を除外することで60年超を可能にした。未経験の稼働だけに厳格な規制・ガイドラインを設け、安全には万全を期したい。

防衛産業の生産基盤強化法が成立し、装備品の国内での開発・生産体制が堅持されると期待したい。装備品は利益率が低く撤退企業が相次ぐ。国内製造拠点への支援を強化するほか、事業継続が難しい企業の製造ラインを国有化し他社に委託できるようにもした。安全保障の観点からも大きな意義がある。

商工中金の民営化に向けた改正商工中金法が成立した。政府が保有する約46%の株式を売却し、2年以内に完全民営化して企業への出資規制をなくす。再生企業への出資比率の引き上げや、スタートアップへの融資期間が延びることで、これまで以上の産業支援が期待される。

今国会で成立した2024年度一般会計予算は114兆円超と過去最大に達した。税外収入を複数年度の防衛費に充てる「防衛力強化資金」と防衛費で計10兆円超を計上した影響が大きい。ただ同強化資金は防衛費増額に向けた財源の一つに過ぎず、増税財源の額や実施時期は示されていない。少子化対策の財源となる社会保険料の上乗せも議論を年末に先送りした。

衆院解散・総選挙を見据えて有権者に新たな負担を示さないとされ、秋の臨時国会での解散も取り沙汰される。いずれにせよ、年末には難航必至の財源問題に直面し、正念場を迎えると政権は覚悟する必要がある。

(2023/6/19 05:00)

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