社説/物流の2024年問題 運賃適正化と多様な輸送手段を

(2023/6/20 05:00)

ドライバー不足と輸送力の低下が懸念される「物流の2024年問題」。24年度から自動車運転業務の時間外労働時間に年間960時間の上限が設けられ、ドライバーの労働環境が是正される。だが収入減がドライバー不足に拍車をかけ、物流に支障を来しかねない。物流業者と荷主企業が非効率な商慣習を是正し、物流を効率化することでドライバーの労働時間短縮と処遇改善を両立していきたい。

他方、不足する輸送力を補うモーダルシフトや自動運転の可能性についても模索し、脱炭素化やデジタル化の視点からも24年問題に備えておきたい。

ドライバー不足は24年問題以前に深刻化している。若手の人材不足に加え、ネット通販に伴う宅配の増加が長時間労働の背景にある。ただ長時間化は運転時間だけではない。長い荷待ち時間による拘束、納品の厳しい時間指定などにもよる。

荷主企業が対価なしにドライバーに付帯作業への協力を求めるなど、不適正な商慣習も指摘される。これらの商慣習が是正されれば、ドライバーの労働時間は短縮されるはずだ。荷主企業には理解と協力を求めたい。

過当競争にある物流業者は、荷主企業に対する価格交渉力も弱く、運賃を上げにくい。国土交通省は20年度に「標準的な運賃」を告示したが、22年度に荷主から一定の理解を得られた事業者は約43%にとどまる。適正な運賃を実現し、ドライバーの賃上げにつなげたい。

政府の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」は16日に最終取りまとめ案を示し、大筋合意された。荷待ち時間の短縮や不適正な商慣習の是正を荷主企業に求め、適正な運賃の実現の重要性を盛り込んだ。これらを着実に実現し24年問題を軟着陸させることが求められる。

他方、政府は24年度中に新東名高速道路の一部区間で、深夜時間帯に自動運転トラック用レーンを設置する方針を示したほか、JR東日本は東北新幹線で生鮮食品などの貨客混載の実証実験を始めた。トラックの輸送力低下に備えた新たな物流手法の議論も深めていきたい。

(2023/6/20 05:00)

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