(2023/6/28 05:00)
政府は27日、2023年版通商白書を公表した。世界経済の減速やデカップリング(分断)に警戒感を示し、世界経済の機能回復の必要性を強調した。具体的には、世界貿易機関(WTO)を補完する新たなルールの策定や、有志国との供給網構築、グローバルサウスとの連携強化が重要だと指摘する。日本企業が最重視する投資先を中国から東南アジア諸国連合(ASEAN)にシフトしている傾向も盛り込んだ。西側諸国は中ロを念頭に強固な経済安全保障体制を早期に築いていきたい。
世界経済はウクライナ情勢による不確実性の高まりや、インフレと金融引き締めにより減速感を強める。加えてデカップリングは世界経済に多大な損失を与えると白書は警鐘を鳴らす。
西側と東側諸国間で米中摩擦並みの分断(数量規制などの非関税障壁)となれば2030年の世界の国内総生産(GDP)への影響はマイナス2・3%、関税率換算で100%の非関税障壁ではマイナス7・9%に達するという。
WTOに紛争処理能力はなく、欧州連合(EU)が講じる経済的威圧対抗措置などの重要性を指摘する。西側諸国はこうした措置や、有志国との供給網再構築などを推進することで国際貿易の秩序を取り戻したい。
日本企業が最も重視する投資先を中国からASEANにシフトしたことも白書で指摘した。直近10年間では中国が首位だったが、今後5年間ではASEANが首位に躍り出た。覇権主義的な動きを強め、経済安保上のリスクがくすぶる中国依存度を軽減する狙いだ。投資先としてインドを重視する企業や国内回帰を探る企業も増えているという。中国とは安保以外の分野で協力を強化し、不即不離の関係を築くことが求められる。
白書は円安についても言及。円安は輸出を促す効果が期待されるものの、約3割の品目で輸出収益の増加につながっていないと指摘した。ドル建て輸出価格の下落を上回る輸出数量を確保することが求められる。世界経済の減速により数量増は容易ではなく、円安効果は限定的と慎重にみておく必要がある。
(2023/6/28 05:00)