(2023/6/30 05:00)
実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を受けた後の企業倒産が増えている。同融資の本格的な返済が始まる7月以降の倒産増が懸念されていたが、すでに増加傾向が鮮明になりつつある。物価高や人手不足などの複合的要因が倒産時期を早めているようだ。過剰債務の中小企業は、経済正常化にあっても新たな資金調達が厳しく、今夏以降の倒産急増に警戒したい。
帝国データバンクによると、ゼロゼロ融資を受けた企業の倒産は1―5月で236件と、前年同期比で1・6倍に達した。累計の倒産件数は5月までに802件。2022年に月平均32件だった倒産件数は23年に入ると47件に増えている。民間金融機関へのゼロゼロ融資の利払いが7月から24年4月にかけて集中するため、増加傾向に拍車がかかることが懸念される。
ゼロゼロ融資は融資開始から3年は都道府県が利子補給し、元本の支払いは最長5年猶予される。信用保証協会が元本保証するため、金融機関はリスクを考慮せずに積極融資し、中小企業はコロナ禍の長期化で過剰債務に陥った。累計の融資実績は約42兆円に達している。
民間金融機関がゼロゼロ融資を回収できなかった場合、政府の財源を裏付けとする信用保証協会が肩代わりするため、最終的には国民負担となる。帝国データバンクによると、回収できなかった融資額はすでに470億6000万円に達し、国民1人当たり約380円の負担が発生した計算になる。この負担額の増加を抑制する上でも、中小企業の事業再構築などを通じて融資を確実に回収したい。
自主再生が可能な中小企業は経済産業省・中小企業庁が1月に始めた借り換え保証制度(コロナ借換保証)の活用が選択肢の一つになろう。保証限度はゼロゼロ融資の上限を上回る1億円で、保証期間は10年以内、据え置き期間は5年以内。ただ返済負担が軽減されても、事業が再生するとは限らない。高付加価値化を追求した価値の創出といった経営革新や、円滑な価格転嫁による取引の適正化がこれまで以上に求められる。
(2023/6/30 05:00)
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