(2023/7/3 05:00)
中国による恣意(しい)的な運用が懸念される改正「反スパイ法」が1日に施行された。スパイ行為の定義が拡大し、取り締まりもこれまで以上に強化される。中国の外交政策の基本原則「対外関係法」も同日に施行され、中国国内の外国人は中国の国家安全を損なってはならないとした。日本企業は中国を警戒しつつも安全保障以外の分野で関係を強化できるのか、脱中国の動きが進むのかを注視したい。
中国のこれらの動きは対米を念頭に置いた習政権の不安も映し出す。米中、日中の首脳会談を早期に実現し、習政権と意思疎通を継続することも肝要だ。
反スパイ法は2014年に施行され、改正は初めて。スパイ行為の定義が「国家機密」から「国家の安全と利益に関する文書やデータ、資料、物品」の窃取・提供に拡大した。疑いがあれば手荷物や通信機器などを強制的に調べられ、スパイ行為の情報提供者は表彰される。
どのような行為が違法かが不明で、「その他のスパイ行為」との曖昧な表現も引き続き明記された。これまでに少なくとも17人の日本人が拘束され、アステラス製薬日本人駐在員の拘束も日本政府は早期の解放を求めつつ、新たな拘束を警戒して日本企業に注意喚起している。
日本企業は通信機器が中国政府に盗聴される可能性を念頭に置き、政府・軍事施設の撮影や中国の安全保障に関するインターネット検索・保存を控えるなど最低限の防衛策は講じたい。
中国はゼロコロナ政策終了後の景気回復の足取りが鈍く、デフレ懸念も指摘される。習政権は外資誘致を加速したいのが本音だが、経済よりも共産党政権の安定を優先し、対米を念頭に覇権主義的な動きも緩めない。
23年版通商白書によると、日本企業は最も重視する投資先を中国から東南アジア諸国連合(ASEAN)にシフトした。経済安保上のリスクがくすぶる中国依存度を軽減する狙いだ。改正反スパイ法は中国離れをさらに助長し中国経済をさらに縮小させかねない。日本企業は対中リスクと便益をはかりにかけ、利益の最大化を追求したい。
(2023/7/3 05:00)
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