(2023/7/4 05:00)
財務省は3日、2022年度一般会計の税収が71兆円超と過去最高を更新したと発表した。41年ぶりの高い物価上昇率や円安を背景に、消費・法人・所得の主要3税の収入が増えた。ただ同年度の実質賃金は2年ぶりに減少しており、税収の押し上げ要因の一つである物価高がむしろマイナスに作用した側面もあることに留意したい。堅調な春闘で実質賃金が増加に転じ、家計が国内景気の拡大を実感できる環境を早期に実現したい。
22年度税収は21年度の約67兆円を上回り、3年連続で過去最高を更新した。法人税は赤字企業が多い中小企業に対し、円安で業績が回復した大企業が貢献した。所得税は企業の賃上げや就業率が改善したことで税収が増えたとみられる。総務省によると22年度の就業率は61%と前年度比0・5ポイント改善した。これら法人・所得2税の税収増については堅調な経済活動を反映したものと歓迎したい。
ただ最も税収が多い消費税の税収増は財政にはプラスながら懸念が残る。歴史的な物価上昇により、消費者が負担する消費税額が押し上げられた。22年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)上昇率は3・0%に達し、上昇率は41年ぶりの高水準だった。同年度の実質賃金は前年度比1・8%減と2年ぶりに減少しており、家計の負担増が税収増をもたらしたと言える。
実質賃金を単月ベースで見ると4月まで13カ月連続の減少。減少が長引けば回復途上の個人消費に影響を及ぼす。幸い23年春闘は3%台の賃上げ率が見込まれ、日銀によると物価上昇率は23年度に1・8%まで低下する見通しだ。年度内に実質賃金が増加に転じ、賃上げと個人消費を起点とする経済の好循環が回り始めると期待したい。
懸念材料は為替相場と世界経済の行方だろう。政府・日銀は日米金利差の拡大を背景とした行き過ぎた円安には適切に対応し、輸入物価の上昇を抑制してもらいたい。米欧の金融引き締めや、デフレさえ指摘される中国経済の回復の鈍化も懸念されるだけに、日本は内需主導の経済成長を目指す必要がある。
(2023/7/4 05:00)
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