(2023/7/5 05:00)
東京電力福島第1原子力発電所の「処理水」の海洋放出について、政府は「夏ごろ」とした時期の明確化を迫られている。地元漁業者や周辺国の中韓などが海洋放出に強く反発する。だが環境や人に影響しない科学的根拠に基づく放出であり、中韓の原発は日本が予定する以上の量のトリチウムを処分している。日本政府は地元の理解と風評対策に万全を期すことを大前提に、廃炉作業の一環となる処理水問題の歩みを進めたい。
岸田文雄首相は4日、官邸で国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長と面会し、海洋放出の〝お墨付き〟となる包括報告書を受け取った。海洋への処理水の放出設備も6月末に完成し、原子力規制委員会による使用前検査も終了した。首相は関係閣僚に対し、安全性確保と風評対策の徹底、地元や国際社会への丁寧な説明を指示しており、これらの取り組みを確実に実行してもらいたい。
政府は風評被害対策などで計800億円を予算措置したが、風評は事前に抑制する必要がある。処理水の安全性に関する科学的根拠を世界に周知したい。処理水で除去できないトリチウムは国の安全基準の40分の1未満まで濃度を海水で希釈。放出前後には海の放射性物質の濃度変化も監視する体制で臨む。
環境省によると、韓国の古里原発によるトリチウムの年間処分量は2019年に91兆ベクレル、中国の紅沿河原発は同年に87兆ベクレルに達する。日本は年間22兆ベクレルを下回るレベルにとどまる。中韓の主張は非論理的かつ矛盾していると言わざるを得ない。欧州連合(EU)は福島産の水産物など日本産食品の輸入規制を完全撤廃する手続きを始めており、これを追い風に国際社会の理解を醸成していきたい。
最大の課題は海洋放出に反対する地元漁業者らの理解を得られるかだ。政府と東電は15年に「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と約束した。風評対策・漁業支援を一段と強化するなど、首相が先頭に立って海洋放出の前提条件を乗り越えてほしい。約束の反故(ほご)は政府責任として許されない。
(2023/7/5 05:00)
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