社説/インドを考える(下)米印の協力強化で中ロけん制を

(2023/7/12 05:00)

米印による軍事・経済両面での協力強化は、中ロをけん制する上で大きな意義がある。インドは中国と国境問題を抱え、中国が支持するロシアからの兵器調達も削減したい意向だ。6月22日にワシントンで開かれた米印首脳会談は両首脳の思惑が一致し、一定の外交成果を上げることができた。米印の協力強化を国際秩序の堅持につなげることができるのか注視したい。

バイデン米大統領は、国賓としてインドのモディ首相をホワイトハウスに招待した。同盟国以外では初の厚遇で、米国側のインド重視を見て取れる。

会談では米ゼネラル・エレクトリック(GE)とインド国営企業による戦闘機エンジンの共同生産、米国の軍事用無人機の供与、インド国内の造船所での米艦船の修繕などで合意したほか、半導体や重要鉱物、人工知能(AI)などでも協力の強化を決めた。両国の連携強化が、安全保障を目的とした軍事面にも及んだ意義は大きい。

インドはロシアとの関係が深い。インドが2022年に輸入した原油の約2割がロシア産。前年から10倍も増え、ロシアへの経済制裁の抜け道となっている。インドが保有する武器も7割がロシア製。インドにとって安価な原油輸入は歓迎だが、ウクライナ情勢で疲弊するロシアに過度に武器調達で依存する体制は見直したい意向だ。国境問題で対立する中国がロシアに武器供与を停止するよう横やりを入れる可能性もある。インドが米ロから武器を調達する「中立」を重視したことは、西側諸国にとって中ロへの強いけん制につながると期待したい。

ただ米国内にはヒンズー至上主義のモディ政権によるイスラム教徒や少数民族への弾圧に強い反発を示す向きもある。国賓として米国に招待されながらモディ首相の議会演説をボイコットした米議員もいた。モディ首相は首脳会談後の会見で「差別の余地は全くない」、バイデン大統領は民主主義の価値観について率直な協議ができたと話していた。インドが自負する「世界最大の民主主義国」の名にふさわしいかも見極めたい。

(2023/7/12 05:00)

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