(2023/7/14 05:00)
環太平洋連携協定(TPP)の閣僚級会合が16日にニュージーランドで開かれ、英国の加盟を正式に決定する。2018年に11カ国で発足して以来、初めて加盟国が増える。TPPには6カ国・地域が加盟申請しており、慎重な協議を前提に自由貿易圏の拡大を推進したい。
他方、貿易は関税率の撤廃・引き下げといったコスト低減に加え、安定供給・安定調達を担保する経済安全保障の重要度が増している。米国主導の新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の連携強化も併せて進める必要がある。
20年に欧州連合(EU)を離脱した英国はインド太平洋地域を重視し、21年にTPP加盟を申請した。英国の加盟により、世界の国内総生産(GDP)に占めるTPPの割合は12%から15%に拡大する。英国は米豪とともにインド太平洋地域での軍事・安全保障枠組み「オーカス」にも参加しており、安保と自由貿易の両面で同地域での存在感を高めてもらいたい。
TPPには中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、そしてウクライナが加盟を申請中だ。日本の同盟国・米国が抜けたTPPに中国を加えるのは現実的ではなく、台湾の加盟は中国を過度に刺激する。中台の議論は棚上げし、アジア太平洋経済協力(APEC)主要国などから参加国を模索する形で自由貿易圏を広げたい。
米国はトランプ前政権がTPPから離脱し、バイデン政権も米国の雇用を脅かす市場開放に消極的だ。次善の策として22年に発足したIPEFには日米韓やインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)など14カ国が参加する。経済安全保障の確保に向け、供給網強化で合意するなど成果を上げつつある。
ただインドやASEANは政治的に中立を貫き、対中包囲網では足並みが乱れることが想定される。そもそもIPEFは関税引き下げなどの市場アクセスを含まないため、経済圏として魅力に乏しいとの指摘もある。
日本は米国とアジアの橋渡し役として、経済安保を確保する主導力が求められている。
(2023/7/14 05:00)
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