(2023/7/17 05:00)
先週末の為替相場は1ドル=137円台を付け、約2カ月ぶりの円高水準となった。6月末の同145円台から大幅に円高に振れた。背景の一つは、日銀が27、28の両日に開く金融政策決定会合で、大規模金融緩和を修正するとの市場観測。日米金利差を縮小させる修正のため、円高を誘発している。植田和男総裁が金融正常化への一歩を踏み出すのかを注視したい。
市場が注目するのは、日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を修正するかだ。日銀は10年物国債利回りの許容変動幅の上限を0・5%に設定している。だが先週末の長期金利は0・4%台後半に達し、日銀の設定を上回る可能性がある。設定を上回れば日銀は国債購入で金利を下げる必要があり、債券市場を歪めないためにもYCC修正については審議を深めてもらいたい。
日銀がYCCの修正に動きやすい理由が3点指摘される。一つは日銀の想定以上に物価が上昇していること。5月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比3・2%の上昇で米国の6月の3・0%を上回る。現行のYCC維持は困難との見立てだ。二つ目は堅調な23年春闘。30年ぶりの高水準で、長期金利の上限は上げやすい。三つ目は、黒田東彦前総裁がYCCを修正した実績があること。長期金利の上限を22年末に0・25%から0・5%に上げた。黒田総裁の路線を引き継ぎ、大規模金融緩和の枠組みを維持した形での微調整と説明できる。日銀の判断に注目したい。
足元の為替は円高というより「ドル安」との指摘もある。米国の6月の物価上昇率は市場予測を下回る低水準で、12カ月連続で上昇率が鈍化。つれて長期金利が低下し、ドル安を招いている。米連邦準備制度理事会(FRB)は25、26日の会合を最後に年内の利上げを見送るとの観測が広がる。米FRBは年内に2回の利上げを示唆していたが、1回にとどまれば日米金利差がさらに縮小しドル売り材料になる。円高はどこまで進行するのか、日米の金融会合後の為替動向を見極めたい。
(2023/7/17 05:00)