社説/日銀のYCC修正 財政規律を考える契機にしたい

(2023/8/1 05:00)

日銀による国債購入額が減少し、政府に財政健全化を促す契機となることを期待したい。

日銀は28日、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を修正し、0・5%程度だった長期金利の上限を事実上1%まで許容することを決めた。物価高による長期金利の上昇圧力に対応するだけではない。これまで日銀は長期金利が上限を超えると国債を大量購入し、金利を抑えてきた。政府は日銀という安心できる国債の引き受け手を得て、国債を発行しやすい側面が指摘されていた。

日銀の植田和男総裁は、長期金利が今回設定した1%に達する可能性は低いとみており、国債の購入機会は大幅に減少するとみられる。日銀が国債の受け皿とならなければ、政府による国債依存の野放図な歳出増に歯止めがかかると期待したい。

日銀がまとめた1―3月期の資金循環統計によると、日銀は3月末時点で国債発行残高の53・3%を保有する。国債の過半を保有する異常事態にあり、この比率は過去最大である。黒田東彦氏が総裁に就任した直後の2013年3月末は11・6%に過ぎなかった。日銀の大規模金融緩和による国債購入がいかにすさまじかったかが分かる。

日銀によるYCCの修正で長期金利が上昇すれば、国債の利払い費も増額することになる。この点からも、政府は安易な国債発行を慎みたい。政府は6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、コロナ禍で膨張した歳出構造を「平時に戻していく」と約束した。厳守してほしい。

だが政府が閣議了解した24年度予算案の概算要求基準は、政権の「新しい資本主義」に4・2兆円の特別枠を設け、少子化や物価高対策は要求段階で金額を示さない事項要求を認めた。各省庁の歳出圧力が強まりかねない。内閣府の試算では、名目・実質成長率がともに現実的な0%台半ばで推移すれば、国・地方の基礎的財政収支は32年度になっても赤字のままだ。岸田文雄政権は厳しい財政事情と向き合い、財政健全化への中長期の道筋を示してもらいたい。

(2023/8/1 05:00)

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