(2023/8/2 05:00)
製造業と建設業の求人が減少している。人手不足に悩みつつも、原材料や人件費の高騰を背景に求人を手控える企業が増えているとみられる。一方、物価高で生活が厳しい中高年による求職が増えている。物価動向が求人と求職の双方に影響を及ぼしている現状が懸念される。政府は物価動向に十分目配りしつつ、業界の生産性向上や家計への物価高対策など、効果的な施策を模索してもらいたい。
厚生労働省が1日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1・3倍で、前月比0・01ポイント低下と横ばいだった。ただ業界ごとに温度差があり、新規の求人数(原数値)は製造業が前年同月比11・0%減、建設業が同7・2%減と大きく減少した一方、宿泊業・飲食サービス業が同1・3%増、医療・福祉が同0・9%増と増加した。
製造業や建設業は資材価格や人件費の高騰を受け、求人を手控えている企業がある。日銀によると6月の企業物価指数は前年同月比4・1%の上昇と依然高水準で推移している。また厚労省の調査では6月の現金給与総額は同2・9%増と増えた。約30年ぶりの高水準だった春闘の影響が出始めているとみられる。求人を出そうに出せない状況が長引く事態は回避したい。
中でも中小製造業は実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が本格化する企業もあり、台所事情は厳しい。原材料や人件費の高騰分を取引価格に上乗せする価格転嫁を推進し、人材確保を後押ししたい。政府は6月に決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)に、価格転嫁対策を講じると盛り込んだ。実施を急ぎたい。
一方、6月の有効求職者数(季節調整値)は前月比0・6%増と増えた。物価高を背景に、中高年がより高い収入を求め、転職を希望するケースなどが増えている。政府は秋の臨時国会で編成が想定される補正予算案や、24年度予算案で予定する物価高対策で審議を尽くし、有効な対策を講じてもらいたい。内閣支持率回復を狙った大盤振る舞いは厳に慎み、財政規律を順守することが大前提となる。
(2023/8/2 05:00)