(2023/8/4 05:00)
中国政府は1日から、半導体素材などに使われる希少金属のガリウムとゲルマニウムおよびそれぞれの化合物の輸出を許可制とした。日米などが講じる先端半導体・関連製品の事実上の対中輸出規制への報復とみられる。ただ中国は数量制限などを設けておらず、日本企業にどこまで影響が及ぶかは現時点で不透明。日本政府は影響の度合いを見極めた上で、調達先の多様化など適切な対策を講じたい。
中国はガリウムの世界生産の9割超を占める。日本のガリウムは半分近くをリサイクルで調達し、輸入の7割程度を中国に依存する。2014年に中国のレアアース(希土類)規制が世界貿易機関(WTO)から協定違反と判断された経緯から、極端な輸出規制は講じないと期待したい。中国からの輸入減は調達先の多様化やリサイクルなどで補うことを検討したい。
ゲルマニウムの埋蔵量も米国が世界の45%を占め、中国の41%を上回るという。西村康稔経済産業相は中国の輸出規制について「即座に影響は出ない」と見通しており、当面は中国の輸出管理の状況を注視したい。
経済停滞の中国は、不利益となる貿易上の報復合戦は回避したいのが本音だろう。だが米中の覇権争いが続く限り、安全保障をめぐる両国のさや当ては終わらない。中国による軍事転用を防ぐ輸出規制はやむを得ないが、日米は安保以外の分野では中国と協力関係を築き、自由貿易を堅持することが肝要だ。
バイデン米大統領の保護主義には米半導体業界も不満を抱く。バイデン政権は22年に先端半導体、製造装置、関連人材の中国との取引を事実上禁止したのに続き、追加規制を検討している。中国半導体産業への一段の投資規制などで、米半導体業界はこれを控えるよう政権に要請している。大統領選挙を控えるバイデン大統領が保護主義をさらに強めないと期待したい。
日本も輸出管理の対象に加えた先端半導体の製造装置について、軍事転用の懸念がない装置に対象が及ばないよう輸出管理を厳格化し、日系メーカーへの影響を最小限にとどめたい。
(2023/8/4 05:00)