社説/下旬にも処理水放出 地元の理解を前提に廃炉前進を

(2023/8/8 05:00)

東京電力福島第一原子力発電所の「処理水」の海洋放出について、政府は「夏ごろ」としていた時期を早ければ下旬とする方向で調整する。政府は風評被害対策に万全を期し、地元漁業者が求める漁業継続と販路開拓の支援、さらに消費者への安全性の説明を尽くしてほしい。地元の理解を得ることを大前提に、海洋放出が廃炉と福島復興への一歩になると期待したい。

岸田文雄首相は18日に米ワシントン郊外で開かれる日米韓首脳会談に合わせ、米韓の首脳と個別会談し、処理水の安全性についてあらためて理解を求める。首相は帰国後に関係閣僚会議を開き、風評対策の状況などを確認し、海洋放出の時期を最終決定する。首相は全国漁業協同組合連合会などとの面会も調整しており、十分な説明と同時に理解を得る必要がある。

政府と東電は2015年に「関係者の理解なしには、(処理水の海洋放出など)いかなる処分も行わない」と約束している。約束の反故(ほご)は政府の責任として決して許されない。

地元漁業者は、処理水が環境や人に影響しない科学的根拠に基づくものとおおむね理解しているのではないか。最大の懸念は風評被害であろう。中国政府は7月から、日本産水産物に対する放射性物質検査を全面的に始め、事実上の輸入禁止に動いている。中国は日本にとって最大の農林水産物・食品の輸出相手国であり、日本の漁業事業者らの販路拡大に向けた日本政府による支援が求められる。

中国は政治的思惑から処理水放出後にさらなる対日措置を講じる可能性がある。日本は米韓との結束で中国をけん制するだけでなく、9月に開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議や主要20カ国・地域(G20)首脳会議などでも処理水の安全性で協調したい。

韓国政府は7月、日本の処理水放出が韓国周辺の海域に影響しないとの見解を発表し、欧州連合(EU)も8月、福島産の水産物など日本産食品に対する輸入規制を全面撤廃した。こうした国際社会の理解を醸成し、福島復興の歩みを進めたい。

(2023/8/8 05:00)

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