(2023/8/10 05:00)
内閣府が15日に発表する2023年4―6月期の国内総生産(GDP)は、内需の伸び悩みを外需で補う形となりそうだ。内需は物価高により足踏み状態で、外需は半導体不足の緩和で自動車輸出が増え、インバウンド(訪日外国人)消費も拡大した。ただ先行きは世界経済の減速が懸念され、内需主導の成長が求められる。実質賃金がいつ増加に転じるかを注視したい。
主要シンクタンクの予測によると、4―6月期の実質GDP成長率は3四半期連続のプラス成長となる見通しだ。シンクタンク8社の平均はプラス0・75%、年率換算でプラス3・05%と高い成長率を見込む。ただ新型コロナが感染法上の5類に移行し、経済が正常化に向かった中で内需が足踏みした点が懸念される。
実質GDP成長率に対する内需寄与度は、8社平均でマイナス0・13%。一方の外需寄与度の8社平均はプラス0・86%と、外需が成長をけん引している。半導体不足の供給制約が緩和され、自動車の挽回生産で輸出が増加したほか、GDP上は輸出に計上されるインバウンド消費が戻ってきた影響が大きい。6月の訪日外国人客はコロナ禍前の19年6月の72%まで回復している。
一方、内需はGDPの過半を占める個人消費が伸び悩むと予測される。8社平均で前期比0・05%増にとどまり、8社中4社が横ばいまたは減少と予測した。物価上昇に賃上げが追い付いていない影響が大きいとみられる。経済正常化に伴って旅行や外食は増えたものの、「巣ごもり需要」の反動から家電製品などの需要が縮小したほか、物価高を背景に食料品や日用品などの買い控えがあったという。
厚生労働省によると、6月の実質賃金は前年同月比1・6%減と15カ月連続で減少した。23年春闘の賃上げ率は30年ぶりの高水準ながら、いつ実質賃金が増加に転じるかは不透明だ。政府は電気やガスの価格高騰を抑制する激変緩和措置を講じているが、9月末で期限を迎える。秋の臨時国会で効果的な物価高対策を打ち出すのか、堅調な業績を反映した企業の設備投資が増加するかも注視したい。
(2023/8/10 05:00)