(2023/8/11 05:00)
中国政府は、日本への団体旅行を解禁すると日本政府に伝えた。人的交流が促され、インバウンド(訪日外国人)需要が本格回復すると期待したい。ただ日中の往来にはもう一つの課題が残る。中国は日本からの短期出張などに対するビザ(査証)免除措置を現在も停止したままだ。ビジネスの往来を促すことは中国の経済回復にも資する。早期の免除再開を求める。
日本政府観光局によると、6月の訪日外国人客は207万3300人で、コロナ禍前の2019年6月の72%まで回復した。国別では中国が88万人と最多だが、19年6月比の回復率は24%にとどまる。中国が日本行き団体旅行・パッケージツアー商品の販売を中止していた影響が大きい。個人旅行も訪日観光ビザの取得に所得制限を設けている。中国政府が訪日を推奨していないことを国民が忖度(そんたく)した側面もあるとみられる。
中国政府はゼロコロナ政策の終了に伴い、3月までに60カ国への団体旅行を解禁したが、日本は対象外だった。政治的な思惑が観光にも影響してきたのは残念だ。今回、日本への団体旅行が3年半ぶりに解禁され、19年に1000万人近くを数えた訪日客が戻ると期待したい。
ただ中国の7月の消費者物価指数が2年5カ月ぶりに下落するなど経済停滞が続く。デフレ懸念も指摘され、訪日客がどこまで回復するかは不透明。他方、日本はサービス業の人手不足が深刻で、インバウンド増への難しい対応も求められる。
日中間にはビザ申請をめぐる摩擦もある。中国はコロナ禍前、滞在15日以内の短期出張や観光はビザ取得を免除し、コロナ禍下で免除を停止した。ゼロコロナ政策終了後、シンガポールなどへは免除を再開したが、日本への免除は停止されたままである。中国政府は、日本が短期滞在でも中国人にビザ取得を求めている点を指摘し、対等の措置を免除再開の条件とする。
シンガポールは中国からの入国にビザ取得を求めている。中国は日本との不毛な議論に終止符を打ち、ビジネス交流や観光での往来を優先するべきだ。
(2023/8/11 05:00)
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