(2023/8/21 05:00)
中国の景気悪化が世界経済に及ぼす影響が心配だ。中国の7月の経済指標は深刻な不動産不況と個人消費などの減速を鮮明にし、経営再建中の不動産大手・中国恒大集団は米連邦破産法の適用を申請した。景気刺激策を講じようにも、習近平政権は不動産投機を抑制してきただけに大規模な財政出動に動きにくく、大幅な金融緩和も通貨安を招くジレンマを抱える。習政権は大規模な景気対策を封印するのか、政策運営を見極めたい。
中国国家統計局が15日に発表した各種統計は、同国の厳しい経済環境を映し出す。特に国内総生産(GDP)の3割を占める不動産関連の停滞が深刻だ。1―7月の不動産開発投資は前年同期比8・5%減と大幅な減少で、減少は17カ月連続。7月の新築住宅価格も主要70都市のうち7割の49都市で値下がりした。中国恒大集団の破産法適用申請は、米国内の資産差し押さえを回避し、再建を目指すものだが先行きは依然厳しい。
不動産不況の影響は家計や地方政府にも及ぶ。家計は将来不安から貯蓄を増やし、マンション購入の減少で家具・家電などの耐久消費財も需要が縮小。7月の小売売上高は前年同月比2・5%増と前月の伸び率3・1%増を下回った。地方政府は土地使用権の売却収入が減り、厳しい財政事情が継続する。
7月の消費者物価指数は同0・3%下落と2年5カ月ぶりに低下し、デフレ圧力の高まりが気がかりだ。不動産市況の回復や個人消費の喚起に向けた中国政府の適切な対応が求められる。だが習国家主席は財政出動を伴う大規模な景気刺激策には慎重とされる。部分的な政策調整にとどまっており、厳しい中国経済の今後を注視したい。
習政権は2023年の中国の実質成長率について、コロナ禍からの反動により、大規模な景気対策なしでも目標の5%前後を達成可能とみているようにも映る。他方、中国国家統計局は15日、悪化する若者失業率の公表を一時停止すると発表し、足元の景気に神経質になっている。局面変化を迎えた中国経済の実態を見極める必要がある。
(2023/8/21 05:00)