社説/米英のEVシフト 「選挙」見据え、普及減速か注視

(2023/9/28 05:00)

米英で電気自動車(EV)の普及が減速しかねない。世界の脱炭素に影響を及ぼすことはないのか、行方を注視したい。

バイデン米大統領は26日(現地時間)、ストライキ中の全米自動車労働組合(UAW)に異例の支持を表明した。UAWはインフレに伴う大幅な賃上げを求めているほか、ガソリン車より部品点数が少ないEV化が雇用を脅かすと警戒する。最も労組寄りの大統領とされるバイデン氏によるUAWへの支持表明は、脱炭素より2024年の大統領選挙を優先したと映る。

バイデン政権は22年8月にインフレ抑制法を成立させ、EVなどの新車購入に最大7500ドル(約112万円)を税額控除している。32年には新車販売の最大7割をEVで占めると見通す。だが大統領選で労組票を求めることで、脱炭素化が足踏みしないか心配だ。労組が高水準の賃金を獲得すれば、EV化の巨額投資も難しくなる。バイデン大統領の労組支持は政策の修正と受け止められかねず、選挙に有利に働くかも懸念される。

英国はガソリン車・ディーゼル車の新車販売禁止の時期を30年から35年に5年延期した。英国では25年1月までに総選挙が実施される。足元の英国経済はインフレに見舞われ、高額なEVの購入は促しにくい。英国も米国と同様、有権者への配慮がEV化を減速させかねない。ただ欧州連合(EU)は合成燃料車を除くエンジン搭載車を35年に全廃する方針であり、EUと歩調を合わせたとも言える。

急成長する中国のEVも先行きに不透明感が漂う。EUは、中国政府の補助金を受けた中国製EVがEU市場の競争を阻害している疑いがあるとし、補助金の状況を調査している。不当な廉売が確認されれば、追加関税を課される可能性がある。安価な中国製の締め出しにより、EUでのEV需要が縮小するのか、調査の行方を注視したい。

日系メーカーは出遅れたEV対応の歩みを進め、脱炭素社会の実現に貢献したい。全固体電池の実用化・量産技術で世界をリードし、EV市場で巻き返しを図ることが期待される。

(2023/9/28 05:00)

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