(2023/10/3 05:00)
スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、2023年のノーベル生理学・医学賞を米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ特任教授ら2氏に授与すると発表した。新型コロナウイルスで実用化された「mRNAワクチン」を開発した功績が認められた。短期間での実用化のみならず、パンデミック(世界的大流行)収束に多大な貢献を果たしたと高く評価したい。
翻って日本。生理学・医学賞としては18年の本庶佑氏(京都大学特別教授)以来6人目の受賞が期待されたが至らなかった。日本はこれまで28人(米国籍を含む)がノーベル賞に輝いたが、今後も継続できるのか懸念が残る。日本はワクチン開発をはじめ、研究開発力の低下が懸念される。停滞する日本の研究力を向上させる起死回生の手段と言われる「国際卓越研究大学制度」などで果たして巻き返せるのか、注視していきたい。
自然科学系のノーベル3賞の日本人受賞者(米国籍を含む)は2000―22年に20人を数え、米国に次ぐ2位に位置する。だが文部科学省の「科学技術指標2023」によると、注目度の高い論文数(他の論文に引用された回数が上位10%に入った論文数、19―21年平均)で日本は13位。20年ほど前は4位で、その凋落ぶりが懸念される。
国際卓越研究大学制度は10兆円規模のファンドを株式投資などで運用し、運用益を卓越大学に配分する。卓越大学は新たな財源を得て、世界トップクラスの研究者の招聘(しょうへい)や若手研究者の育成に充てることになる。研究時間を十分に確保し、研究者の負担も軽減させるという。
24年度中にも正式認定する東北大学のほか最終的には数大学を認定し、1大学当たり年間数百億円の供与を想定する。ただ学外者を含む意思決定機関の設置や、年3%の事業成長を求められる。短期的な研究成果を追い、基礎研究がおろそかになったり、大学の自治に影響しかねない課題があることも留意する必要がある。各大学が世界と戦える研究力を獲得するには、外部の関与を最小限にとどめつつ大学の意識改革を進めたい。
(2023/10/3 05:00)