(2023/10/18 12:00)
対応すべき需要と供給能力に甚大な乖離(かいり)が生じた、そのようなサプライチェーン・マネジメント(SCM)上の問題状況に対応するためのアプローチの一つがセールス・アンド・オペレーションズ・プランニング(S&OP)だ。S&OPという用語自体は1980年代に登場した。日本においてもそれなりに知られているように思う。しかしその用いられ方については一様でないのが現状だ。「世界標準のSCM」ではS&OPをどのように捉えているのか、掘り下げてみたい。
SCM実務家の間でS&OPのリーディングケースの一つとされている事例が「ウォルマートの星条旗」だ。2001年、同時多発テロ事件直後の米国では愛国心を示すための星条旗の需要が急増した。当然、求められたのは米国製の星条旗であったが、条件を満たすメーカーは限られていた。小売業大手のウォルマートからの大量注文を予見した国旗メーカーは、増産の設備投資を行う一方、製品のサイズや種類を絞って供給能力の大半をウォルマート1社向けの生産に割り当てた。
この星条旗の事例から読み取るべきポイントは二つある。一つはこの国旗メーカーが行った意思決定が供給活動の優先順位に関するものであること、他方は経営資源の再分配に関する意思決定を行っていることだ。S&OPは両者を含むが、固有の役割は後者にある。
平時のSCMにおいては、販売部門やマーケティング部門といった需要サイドと生産部門や調達部門といった供給サイドが、両者の合意に基づく供給計画を立案することが求められる。いわゆる製販部門間の需給調整会議が重要な役割を果たす。しかし、その責任範囲を超えたイシューには経営資源の再分配を検討する必要がある。製販両部門に加えて経営層の意思決定への参画が不可欠な点がS&OPの特徴といえる。
もっとも、有事の際に押っ取り刀でS&OPを行うことは容易ではない。マクロレベルの環境変容を意識した投資判断が可能なタイミング=18カ月程度先を見据えて毎月ローリングで需要の変化を観測する。平時の警戒があって初めて有事対応が可能になる、というのが世界標準のSCMにおけるS&OPの考え方だ。
◇著者:MTIプロジェクト 『基礎から学べる!世界標準のSCM教本(日刊工業新聞)』の著者である山本圭一・水谷禎志・行本顕の3氏によって創設された世界標準のSCM普及推進プロジェクト。MTIは「水山行」のラテン語の頭文字。本連載はメンバーのうちASCMのSCMインストラクター資格を持つ行本顕が執筆を担当
(2023/10/18 12:00)
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