キトー、障がい者が働きやすい職場環境に “聞こえない研修”で立場理解

(2023/10/25 12:00)

キトーはホイストやクレーン、チェーンの世界的大手。山梨県昭和町にある本社工場は敷地面積約16万2500平方メートル、建築面積約7万6700平方メートルの規模で、聴覚や知的障がいなど35人の障がい者が働いている。事務系と合わせた障がい者の雇用は計37人に及ぶ。障がい者雇用方針を中期経営計画に明記したのは2011年。取り組みの歴史は10年以上になり、社内の理解も進んでいる。

  • 障がい者と健常者が同じラインで作業することで、相手に分かりやすく伝え、思いやる気持ちが自然と生まれている

主力生産拠点の本社工場はチェーンを生産するA棟、中心部のB棟、大型マシンでアルミダイカストやプレス加工を施すC棟、クレーン部品のD棟、ホイストの組み立て・梱包(こんぽう)を行うE棟、クレーン製造のF棟などがある。障がい者は健常者と同じラインで作業をしている。

聴覚障がい者で一番問題になるのは、労働安全の確保。危険防止のため搬送車や機械の警報が鳴り響いても、本人が気付かないケースがある。経営管理本部人事部人事グループの坂本美和氏は「音声による警告に加え、光るチャイムや進行方向をライトで照らすなど、聴覚障がい者の要望を聞きながらいろいろと工夫した」と語る。作業は下向きの姿勢で行うことも多いため、搬送車やフォークリフトがこれから進む方向を床面の光矢印で知らせるようにした。

  • 耳栓とイヤーマフを付けて工場内を歩き、音が聞こえない恐怖を体感してもらう「聞こえない研修」

安全面以外でも、上司が名前を呼んだり部品点数を確認したりした際に、聴覚障がい者が気付かないケースが想定される。そこで必須となるのが工場の班長ら上司を対象とした“聞こえない研修”だ。耳栓とイヤーマフを付けて工場内を歩き、音が聞こえない恐怖を体感してもらう。障がい者の立場を確認することで「相互理解の促進に役立っている」(坂本氏)。

知的障がい者の場合も同様だ。教えたことを忘れてしまう傾向があるため、作業手順を写真やイラストを用いて分かりやすく表示。新入社員や外国人社員からも「内容を理解しやすい」と好評という。

障がい者雇用の取り組みを通じて得たメリットは、誰もが働きやすい職場環境と社内の融和だ。「教わる側だけでなく教える人間も成長する。相手に分かりやすく伝える気持ち、相手を思いやる気持ちが自然と生まれる」(同)。外国人社員との融和にも、この経験が役に立ちそうだ。

(2023/10/25 12:00)

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