(2023/11/6 12:00)
産学連携で開発された眼科手術支援ロボットの実用化に向けて、九州大学で取り組みが進む。眼内手術において、照明付き内視鏡をロボットが保持することで医師は両手で施術できるようになる。特に活躍しそうなのが難易度の高い手術。ロボットが助手として信頼を得た先には、眼内で施術できるロボットの開発につながることも期待される。ただ関係者は慎重に安全を確認しながら実績を積み重ね、少しずつ導入を広げていく考えだ。
ロボットの名は「OQrimo(オクリモ)」。九大のほか東京工業大学、順天堂大学、山口大学、手術支援ロボット開発企業のリバーフィールド(東京都港区)が共同開発に参画した。
オクリモが対象とするのは眼科手術の中でも眼球内にある網膜を扱う手術などだ。具体的には網膜色素変性や糖尿病網膜症、加齢黄斑変性など網膜硝子体疾患に対する手術での利用を見込む。
眼内手術は従来、片手に照明付き内視鏡を持つ。その画像を見ながら、もう一方の手で器具を用いて施術する。器具の先端では、膜や血管をつかむといった細かな動作を行う。
オクリモは足元のコントローラーで操作し、眼球内で内視鏡を安全に保持する。2本のスティックは片足で動かせ、内視鏡の位置を変える。眼科手術では足でペダルを動かして制御する機器はこれまでもあった。
両手を使えるようになることで、動く網膜を押さえながらの施術など、従来難しかった動作が可能になる。手術時間を短くする可能性もある。
内視鏡の画像の見やすさも特徴だ。メーン画像のそばには、眼内の空間や、内視鏡が眼球のどこを見ているかの把握を助ける画像を表示。ズームイン/アウトしていることも画面に分かりやすく示す。開発に携わり、オクリモを操作してきた九大大学院医学研究院の園田康平教授は「直感的に思った通りに使える」と説明する。
安全機構は多重に設けた。ロボットが衝撃を感知した場合や、手術者が急を要すると判断した場合は内視鏡を素早く安全な位置に動かせる緊急退避機能がある。
今後はオクリモを運用する手術と具体的使用場面を限定して使い始め、適正使用マニュアルを作成していく考え。実績を積んでから使える場面を少しずつ増やしていく方針だ。医師に対して、トレーニングを受けて認められるライセンス制度の導入を目指しており、制度設計を進める。技術指導の方法や体制も構築する。
患者に対しては、オクリモの使用をどのように説明するかの文章を検討中。実際の現場では患者が選択でき、同意を得た上での使用となる。
オクリモは眼科医の間で関心が高まっており、海外からの引き合いもある。しかし園田教授は「自分はブレーキ役を務めていきたい。一歩一歩進めていく」と気を引き締める。実際の手術での利用は九大で2024年になる見通しだ。
(2023/11/6 12:00)
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