産業春秋/手紙が特別なことに

(2023/12/21 05:00)

ポストをのぞくと懐かしい文字。クリスマスを間近に控え、古い友人から相次ぎカードが届いた。10代の頃から変わらない字体に心がじんわり和む。踊るようなインクの「言葉」は、スマートフォンの画面に映し出されるメッセージとは異なる体温を発しているかのようだ。

郵便料金の値上げが検討されている。総務省は25グラム以下の定形封書の上限額を現在の84円から110円に引き上げる案を審議会に示した。実現すれば消費増税を除くと30年ぶりの値上げ。はがきも7年ぶりの値上げとなる見込みで、63円から85円になる。

取扱量の減少や人件費の上昇に伴い、日本郵便の2022年度の郵便事業の収支は郵政民営化以来、初の赤字となった。年賀状を控える傾向も年々、広がっているように感じる。こうした現状を踏まえれば値上げはやむなしか。

いつの世も、社会は効率性や合理性を原動力に前に進んできた。気になるのは今回、値上げに踏み切ったとしても日本郵便の収支は大幅改善が見込めないらしいという点だ。25年度は黒字転換するもののその後は再び赤字になると試算される。

近況を手紙で伝え合う。そう遠くない未来、それは特別なことになるかもしれない。

(2023/12/21 05:00)

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