近江商人の教え“顧客のため”に重点 東レエンジ、DX活用でリードタイム短縮

(2023/12/25 12:00)

東レエンジニアリング(東京都中央区、岩出卓社長)は、プラントや工場自動化(FA)などを手がけるエンジニアリング事業と、製造・検査・計測機器やソフトウエアを提供するメカトロファインテック事業の2事業を展開している。システムインテグレーター(SIer)はエンジニアリング事業内のFA事業部が担う。

  • 22年に導入したシミュレーターで属人化解消などを進めている

近年は燃料電池や太陽電池、リチウムイオン電池(LiB)などの電池関係、医薬品関係の製造ライン向けの自動化設備の提案・提供が主力。エンジニアリング事業本部の曽谷紀樹FA事業部長は「FA事業を持つことが東レエンジグループ全体の強みになっている」と強調する。例えばプラント事業部が受注した化学プラント案件で、自動出庫・梱包(こんぽう)の要望があるとFA事業部が手がける。

FA事業部技術部技術1チームの美馬成治チームリーダーは「SIerというと自動化システムを主体に作るイメージだが、当社は工場全体を見てメンテナンス性や生産性など仕様書にないところから出発して最適ラインを提案している」と自負する。顧客の困りごとを丁寧に拾い上げ、システムを組み上げていくのが同社のSIerとしての特徴だ。

一方で、近江商人の商売十訓の一つ「無理に売るな、客の好むものを売るな、客のためになるものを売れ」をFA事業部の方針としている。「自分たちの提案が顧客にどんな付加価値を提供できるかを意識付けるため、ここ2年ほどはこのキーワードを掲げている」(曽谷FA事業部長)という。

現在、デジタル変革(DX)を活用して設計に重点を置く取り組みを進めている。現状は1人の技術者が構想から設計、立ち上げに至るまで担う垂直型の業務形態で、属人化が課題となっている。そこで2022年にシミュレーターを導入。仮想空間で製造ラインなどのモデルを作り込む。設計に労力をかけ、現場作業を減らす方向だ。リードタイム短縮や品質向上によって“顧客のためになる”提案を強化する。

新分野への展開も進めており、30年ごろにはFA事業で現状比約4割増の売上高100億円に近づけていく。

(2023/12/25 12:00)

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