(2024/1/5 05:00)
2024年の日本経済は「失われた30年」を取り戻す起点の年としたい。日本の平均賃金は経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国中25位、労働生産性は30位、1人当たり名目国内総生産(GDP)は21位に沈んでいる。まずは24年春闘で意欲的な賃上げを実現し、デフレから脱却したい。その上で、岸田文雄政権が掲げる三位一体の労働市場改革や企業の成長分野への投資を促し、日本の世界での存在感を高めていきたい。
「縮む日本」が懸念される。国際通貨基金(IMF)によると、名目GDPの総額でも日本は23年にドイツ、26年にはインドに抜かれると見通す。
バブル崩壊後の失われた30年は低成長とデフレに見舞われ、企業はコストカット経済に傾斜した。非正規雇用が労働力の調整弁とされ、低賃金の非正規労働者は全従業員の約4割を占めるまで拡大した。加えて新興国の台頭により日本企業は価格競争に奔走し、イノベーションを怠ったことも国際競争力を低下させてきたと言えよう。
岸田政権の労働市場改革は、学び直し(リスキリング)などの人的投資、職務給の導入、成長分野への労働移動を三位一体で行い、賃金の底上げを図るものだ。同一労働同一賃金や非正規雇用の正規化なども推進し、賃金と物価がともに上昇する好循環の実現につなげたい。
産業界は「中長期」の視点で人的投資やデジタル変革(DX)に象徴される成長分野に積極投資し、企業価値を高める必要がある。目先の株価や株主還元にとどまらず、従業員や取引先など多様なステークホルダー(利害関係者)に目配りするコーポレートガバナンス(企業統治)も求められる。中小企業もグループ化や新たな価値創造を通じて価格交渉力を高め、継続的な賃上げにつなげてほしい。
24年春闘で賃金と物価の好循環が確認されれば、日銀は金融政策の正常化を検討する。「金利のある世界」は企業の資金調達などで痛みを伴う。企業は縮小均衡のデフレ思考を改めて拡大均衡に転換し、金利のある世界への耐性を高めておきたい。
(2024/1/5 05:00)