(2024/1/26 12:00)
多様な商品を識別してハンドリングする。これはロボット研究者が長年取り組んできた課題であり、解決し次第商売になる技術だ。人工知能(AI)技術の進歩で商品のデータを用意すれば識別できるようになってきた。ただデータの種類や規模によっては現実的な予算に収まらなくなる。技術のポートフォリオが必要だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業で大学と企業が切磋琢磨し選択肢を広げている。
「大学の先端研究と企業の技術開発の相乗効果を出していきたい」とNEDOの千田和也主幹はプロジェクト間の連携を進める。NEDOでは「革新的ロボット研究開発基盤構築事業」で産業用ロボット次世代基礎技術研究機構(ROBOCIP)、「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」ではパナソニックコネクト(東京都中央区)が商品ハンドリング用のデータベース構築技術を開発している。
ROBOCIPは大学研究者を中心に、商品の立体形状や重心、表面性状などのデータを集める技術を開発する。重心が分かれば持つ位置を調整でき、滑りやすさなどの表面性状が分かれば持つ力を調整できる。例えば金槌は柄と頭の重さが違う。筑波大学の相山康道教授は「立体形状から重心を判断できない商品は重心位置のデータがあると把持が安定する」と説明する。ロボットが商品を振って重心を計算するシステムを開発した。
ただ、すべての商品に対してデータをそろえるのは難しい。そこで大阪大学は未登録商品は登録データの中から似た商品を探し、足りないデータを補完する技術を開発した。特に工場内物流など、製造現場の部品や部材を扱う場面で力を発揮する。阪大の原田研介教授は「製造系のデータは少ない。AI開発の課題だった」と振り返る。新技術で未登録品を前提にシステムを構築できるようになる。
大学の研究はデータを少し贅沢に集めて可能性を検証する。対して企業の開発は厳しく費用対効果が求められる。パナソニックコネクトは二次元の商品画像と重さなどのメタ情報で商品を識別する。同社ソリューション開発研究所の山口俊樹氏は「できるだけ軽いデータで識別したかった」と説明する。画像は立体データよりも軽く、転用しやすい。そこで商品の全方位撮影装置を開発し、撮影時間を4分の1に短縮した。物流ラインの自動仕分けや陳列棚の欠品検知に展開していく。
大学と企業のプロジェクトを並走させて技術のポートフォリオを構築する。これが選択肢を増やすことになる。実は研究者や技術者が導いた最適解がユーザーにとっての正解とは限らない。ユーザーが自分の現場に合わせて技術を取捨選択して導入システムを固める過程をサポートするには、技術の幅が必要だった。ROBOCIPのプロジェクトリーダーを務めるデンソーの馬場裕康氏は「NEDOのおかげで厚みのある開発ができている」と目を細める。ポートフォリオの厚みは導入支援のサポート力に直結する。連携で社会実装を加速する。
(2024/1/26 12:00)
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