(2024/1/29 12:00)
金属プレス加工メーカーの太平プレテック(佐賀市、野口清二社長)は、自動車部品の溶接工程にロボットを導入して自動化を進めている。稼働が軌道に乗るまでに失敗もあり、試行錯誤の連続だった。最終的に現場の環境に合わせたシステムを構築し、活用の拡大も実現した。導入過程で担当者は関連技術を多く身に付けた。将来は経験を生かし、ロボットによる取り扱いに対応した金型を作ることも構想する。
ロボットの役割の一つは溶接機に部品をセットすることだ。手がける溶接の種類が増えたことがロボット導入のきっかけとなった。仕事量も増加する中、部品をセットする作業時間などを考慮して導入検討を始めた。
部品一つに多数の物を溶接するようになり、小さな部品の溶接を忘れてしまう懸念もあった。溶接位置をはじめ、溶接部品の垂直度合いといった品質に関するチェック項目は多く、品質安定も導入の後押しとなった。
当初、導入効果を高めるため、ロボットを活用する対象製品は溶接点数の多い2品目を選んだ。溶接に関する過去の不具合データも選定時の参考にした。
ロボットを現場で稼働させるまでには設備業者と二人三脚で取り組んだ。最初はエラーが出たり、思うように動かなかったりと「失敗続きだった」(野口慎平常務兼営業・生産部本部長)。設置場所が変わるだけでうまくいかないケースもあった。
作業環境で特に大きく影響したのが光だった。カメラでの判断が多く、製品を正確に捉えられないことがあったためだ。通常業務をこなしながら問題を洗い出し、設定の調整を繰り返した。担当者は社外の講習も受けてロボットのティーチングやメンテナンスの技術を磨いた。
受注品目の変化に伴いロボットを使わなくなった時期もあったが、利用再開に当たり稼働率を高めるべく一気に6品目を対象とした。ロボットの仕様をできるだけ変えないようにしつつ慎重に作業を覚えさせて実現した。
例えば製品の切り替えの際にどのような動きをするかなど、さまざまな状況を想定しエラーに対処していった。特に苦労したのは制御部分。例えば3段階の作業で一つ目、二つ目、三つ目と成功し、再度一つ目に戻ろうとすると不具合が起きる事象も生じた。現在は「休憩なしでバリバリ稼働」(野口常務)するなど活躍している。
太平プレテックの導入済みロボットは1台だが、将来増設していく考えで、プレス加工工程での導入も今後検討する。「オートメーション化できるところはしていきたい。人にしかできない仕事はまだまだある」(同)との考えだ。
同社はプレス金型を設計製作し、外販もする。金型が使われる現場でロボットが稼働することは増えている。
野口常務は「ロボットの経験や知識が金型作りに生かせるかもしれない」と期待する。ロボットによる搬送に適した金型製作などを構想する。
(2024/1/29 12:00)
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