産業春秋／「値上げ」これが最後のチャンス

「ここでできなければ、もうできない」。この言葉、官民問わずあちこちから聞こえてくる。「賃上げ」「利上げ」「値上げ」のことだ。賃上げは政労使の足並みがそろった。日銀は賃上げ状況を見極めて金融政策を正常化し、利上げのタイミングをうかがう。

問題は値上げだ。中でも最終製品の値上げは「交渉をしたことがない」と尻込みする現場の話も耳にした。指示する幹部も値上げは若い時のわずかな経験しかない。

失われた３０年で日本人は相当に縮こまったようだ。企業にはデフレ心理が染み付き、値上げよりコスト削減を優先してきた。このコストを製品価格に適切に反映させ、縮小均衡から拡大均衡に転じてほしい。

物流業でも値上げの問題を抱える。国土交通省のトラックＧメンが１１・１２月に全国で行った集中監視では、ドライバーの長時間の荷待ち、運賃・料金の不当な据え置きなどが確認された。改善に向けた荷主などへの働きかけ・要請・勧告は月当たり１０６・５件に上った。

４月に迫る２０２４年問題への対処。当事者である事業者に対して「ここでやらねば」と行政が働きかけている。新たな成長軌道に乗せる「最後のチャンス」を生かしてほしい。