(2024/2/9 05:00)
2023年10―12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は2四半期ぶりのプラス成長となる見通しだ。個人消費や設備投資などの内需が弱い一方、輸出の増加が成長を支える。ただ輸出は一時的な押し上げ要因によるもので、日本経済は力強さを欠く。24年春季労使交渉(春闘)での賃上げを起点に弱い内需を喚起し、デフレから脱却できるのか正念場を迎える。
内閣府が15日に発表する23年10―12月期の実質GDP成長率(速報値)について、シンクタンク10社は年率換算でプラス0・4―2・5%、10社平均ではプラス1・6%と予測する。同7―9月期のマイナス2・9%を補うには至らない。GDPの過半を占める個人消費や住宅投資、設備投資が弱含んでいるのが気がかりだ。
個人消費は10社平均で前期(23年7―9月期)比0・3%増と微増にとどまる。実質賃金の低下が続き、コロナ禍明け後の需要回復も一服した。住宅投資は10社平均で同0・7%減。資源高や人手不足による住宅価格の高騰が響く。設備投資も10社平均で同0・6%増と微増。自動車の挽回生産など、設備投資を促す材料はあったものの、力強さを欠く。業績堅調な中での投資の弱含みが懸念される。
輸出は10社平均で同2・1%増と堅調だ。自動車輸出の回復や訪日外国人客の増加もあったが、最も寄与したのが「知的財産権等使用料」の増加だ。日本の特許権などの知財使用で大口の受け取りがあったという。一時的な増加要因と留意したい。
日本経済の最大の命題であるデフレ脱却には、内需主導の成長が欠かせない。中東情勢に加え、高水準の政策金利が続く欧米や不動産不況の中国など、外需には依存できない。1―3月期は能登半島地震の影響が「限定的と判断」(日本総合研究所)されるものの、成長率は横ばい圏にとどまる見通しだ。
政府は春闘での意欲的な賃上げと定額減税により、24年度に所得増加率が物価上昇率を上回ると見通す。日銀の金融政策の正常化も視野に入ってくる。日本経済の景色を変える「歴史的な春闘」になるか注視したい。
(2024/2/9 05:00)
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