(2024/2/20 05:00)
政府は少子化対策の財源の一つとして、「子ども・子育て支援金」の創設により年1兆円を確保することを決めた。岸田文雄首相は社会保障改革や賃上げにより実質的な負担はないとの説明を繰り返す。だが支援金制度の詳細が不明で、現役世代の負担増の可能性を拭えない。岸田政権は加入者の保険の種類や収入によって異なる負担額を早期に公表し、現役世代の理解を得ることが求められる。
政府は少子化対策の財源として2028年度までに年3・6兆円を確保する。歳出改革で1・1兆円、既定予算の活用で1・5兆円、残る1兆円を子ども・子育て支援金で賄う。同支援金は、加入者1人当たりの負担が26年度は月平均300円弱、27年度同400円弱、28年度同500円弱になるという。
だが支援金の額は、中小企業の従業員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)や大企業の健康保険組合など、保険の種類によって異なる。収入に応じて負担が決まる医療保険料の仕組みも使うため、現役世代の負担は相対的に大きくなる。どの程度の負担増となるのか、岸田政権は保険・収入ごとの試算を早期に公表し、通常国会で審議を尽くすことが求められる。
岸田首相は社会保障の歳出改革や賃上げが進めば、支援金の負担は実質ゼロになると説明する。だが賃上げ額は業種や企業規模などで異なる。歳出改革も容易ではない。24年度診療報酬はマイナス改定だったものの、医療・介護従事者の“賃上げ”によりマイナス幅は小幅にとどまっていたことに留意したい。
少子化対策の財源の総額年3・6兆円を確保できるかも不透明だ。政府は必要に応じ、つなぎ国債で財源を確保するというが、国債頼みの状況で「金利のある世界」を迎えれば財政健全化はますます遠のく。児童手当の拡充など給付先行により少子化対策を決め、財源の議論を先送りしたツケが回っている。岸田政権は28年度までに安定財源を確保するという。日本経済を拡大均衡へと再生し、消費増税などもタブー視せずに議論できる環境を早期に実現したい。
(2024/2/20 05:00)
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