(2024/2/21 05:00)
政府は「物流2024年問題」の対策を盛り込んだ中長期計画をまとめた。トラック運送業への不合理な商慣習を見直し、トラック運転手の労働時間を短縮する。残業の減少による収入減を勘案し、2024年度に賃金を10%前後引き上げる目標も掲げた。物流業者は24年問題を事業の効率と革新に向けた転機と位置付け、継続的に賃上げできる事業に再生してほしい。
4月から自動車運転業務の時間外労働時間に年間960時間の上限が設けられ、収入減がドライバー不足に拍車をかけかねない。対策を何も講じなければ輸送能力は24年度に14%、30年度に34%不足するとされる。物流業界の労働時間は産業平均より2割長く、賃金は1―2割低いとの調査もあり、処遇改善は待ったなしの状況である。
政府は国土交通省が定める運賃水準の目安「標準的な運賃」を平均約8%引き上げるほか、トラック運送業をめぐる「不合理な商慣習」を見直すことで、24年度に10%前後の賃上げは可能とみる。「不合理な商慣習」とは、運転手による長時間の荷待ちや、荷主が運転手に対価なしに荷物の積み下ろし(荷役)を要請することなどである。政府は24年度に荷役にも新たな価格体系を設ける。荷主には全面的な協力が求められる。
政府は、運転手の荷待ちや荷役の時間を30年度までに1人当たり年間125時間削減、積載率を44%(19年度は38%)に向上、宅配などの再配達率を6%に半減させる数値目標も掲げている。関連法の改正により、こうした計画の策定を事業者に義務付けるという。政府は自動倉庫や無人フォークリフトなどのシステム投資を支援する方針であり、こうした支援も活用しつつ24年問題を克服したい。
他方、24年問題を物流手段の多様化や新たな物流網を開拓する好機と捉えたい。モーダルシフトの推進や連結トラックの導入、さらに高速道路や地下を利用した自動物流道路なども政府は構想している。飛行ロボット(ドローン)利用も含め、次世代技術を活用することで、物流を魅力ある事業に再生したい。
(2024/2/21 05:00)