(2024/2/28 05:00)
上場企業の堅調な業績などを背景に株価4万円台が視野に入る一方、中小企業は厳しい経営環境にある。実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の本格返済を4月に控え、2024年の企業倒産(負債総額1000万円以上)は1万件を超える可能性があるという。金融庁は今春に金融機関向け監督指針を改正し、これまでの資金繰り支援から事業再生支援へと支援の軸足を移す。中小企業に新陳代謝を促し、収益基盤の強化が進む転換点となるか注視したい。
民間金融機関のゼロゼロ融資の返済が4月に2回目のピークを迎える。1回目のピークは23年7月で、東京商工リサーチによると23年の倒産件数は前年比35%増の8690件と大幅に増えた。ゼロゼロ融資の返済に原材料高と人手不足が追い打ちをかけた形だ。倒産に「休廃業・解散」を加えた件数は同4・3%増の5万8478件と過去最多だった。24年は倒産件数が1万件を超え、高水準の「退出企業」を数えると想定される。
退出企業の増加はむしろ望ましいとの指摘がある。東京商工リサーチは「抜本的な事業再構築を伴わない安易な延命は負債の増大を招き、取引先や従業員への影響を広げるもろ刃の剣になりかねない」と指摘。経済同友会の新浪剛史代表幹事は最近の株高に関連して「中小企業に補助金を出し、新陳代謝を止めるようなことがあれば株価は下落する」とし、合従連衡しやすい環境整備などを求める。
「失われた30年」を取り戻そうと、日本経済は新たなステージに向かおうとしている。停滞していた賃金が2年連続で大幅な上昇に向かい、ぬるま湯状態の超低金利社会は「金利のある世界」へ移行しつつある。この変化は産業界に収益基盤の強化を促す一方、経営体力で劣る中小企業は退出や新陳代謝を迫られる。政府の中小支援は資金繰りから事業再生に移行し、中堅企業による中小企業のM&A(合併・買収)・グループ化を促す産業競争力強化法の改正案も閣議決定した。生産性の低い中小企業の事業再構築を進め、産業界の活力と成長を促したい。
(2024/2/28 05:00)
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