(2024/3/12 05:00)
13日に2024年春季労使交渉(春闘)の集中回答日を迎える。今春闘は日本経済がデフレから完全脱却し、「失われた30年」で凍り付いた「賃上げ・値上げ・利上げ」を定着させる転換点となることが期待される。高水準の株価を維持し、主要国では日本だけが採用するマイナス金利政策を解除するには、意欲的な賃上げが欠かせない。企業の成長の果実を従業員に還元する「成長と分配の好循環」を持続させ、日本経済は拡大均衡の成長軌道を描きたい。
すでに自動車や小売り・サービスなどで連合の要求を上回る早期決着が相次ぐ。ホンダやマツダの賃上げ率は5―6%台で満額回答。イオンリテールやニトリホールディングス(HD)も6%台、味の素やサントリーHDも約6―7%と連合の目標「5%以上」を上回る。この流れが継続し、中小企業にも波及するかが今春闘の焦点になる。
全事業所の7割を占める中小企業の価格転嫁を円滑に進め、全労働者の4割に達する非正規雇用者の処遇も改善したい。経団連は今春闘での経営側の指針で、中小企業の賃上げを支え、有期雇用労働者の待遇改善を進める必要性を示した。この指針通りに、産業全体の賃金底上げと正規・非正規の賃金格差是正が求められる。意欲的な賃上げで消費が上向けば、株価と実体経済の乖離(かいり)も是正されよう。
中小企業は人材確保を目的にやむを得ず「防衛的賃上げ」を行っている。だが限界があり、公正取引委員会は23年11月、中小企業の賃上げ分の価格転嫁を促す指針を公表した。そうした中で、日産自動車が一方的に下請けへの代金を減額し、公取委から再発防止の勧告を受けたのは残念だ。中小企業の価格転嫁を「新たな商習慣」とする意識改革を親企業に強く求めたい。
他方、中小企業は生産性向上や新たな価値創出により、賃上げ原資を確保する自助努力も求められる。また労使は25年以降も持続的な賃上げを実現するため、学び直し(リスキリング)や職務給の導入、成長分野への労働移動などにより、分厚い中間層の形成を進めてほしい。
(2024/3/12 05:00)
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