(2024/3/20 05:00)
日銀は19日の金融政策決定会合で、政策金利を約17年ぶりに引き上げることを決めた。2024年の賃上げ率の回答が5%台と23年の3%台を大幅に上回り、2%の物価目標を安定的に維持できると判断した。金融政策が正常化し、13年に始まった異次元緩和の“副作用”が解消に向かうと期待したい。「金利のある世界」が、企業に収益基盤の強化を促す効果も期待される。日銀の歴史的な政策転換を日本経済再生の起点としたい。
日銀は16年導入のマイナス金利政策を解除して金利を引き上げ、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃する。このうちYCCは国債を大量購入し、長期金利の上昇を抑える施策。だが市場機能をゆがめ、政府の財政規律も緩んだ。企業は超低金利の“ぬるま湯”に甘んじ、イノベーションを怠った側面もある。これらの副作用は早期に解消したい。
植田和男総裁は23年4月の就任以来、金融政策の正常化を模索し、23年に2度のYCCの修正を行った。容認する長期金利の上限を引き上げることで、日銀の市場への介入を弱めた。金融正常化への地ならしは今回の政策転換の局面でも行われた。政策転換後も「当面は緩和的な金融環境が続く」と市場に発信し、市場の混乱防止に努めた。軟着陸を試みたと評価できる。
今回の政策転換は米国の利下げ観測が後退している中で決定され、タイミングも良かった。米国の2月の消費者物価指数は市場予測を上回り、19、20の両日に開かれる米連邦準備制度理事会(FRB)会合で利下げは見送られる見通しだ。米国の利下げとタイミングが重なれば円高が加速する可能性があった。
23年10―12月期の実質国内総生産(GDP)成長率はプラスながら、個人消費は前期比0・3%減と停滞している。春闘での意欲的な賃上げで実質賃金が増加に転じるまで、日銀には慎重な政策運営が求められる。中東情勢や中国経済も予断を許さない。日銀は急な長期金利上昇時には国債を購入する方針で、市場を混乱させることなく「金利のある世界」に回帰したい。
(2024/3/20 05:00)
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