(2024/3/21 05:00)
日銀は「異次元」緩和に終止符を打ち、「普通」の金融緩和に転換する。政策金利は0―0・1%と依然として低く、長期金利も上昇を抑えるため月6兆円程度の国債購入を継続するなど、緩和環境が続く。だが「金利のある世界」の本格的な到来に企業はもとより、政府も備えておきたい。日銀が国債購入を減らしたり、国債費が増額することも念頭に、財政健全化の議論を今から深める必要がある。
日銀は政策転換後の利上げペースを明らかにしていない。しばらくは緩和的な金融環境を続け、追加利上げの時期を模索するとみられる。企業の持続的な賃上げや積極的な成長投資により経済好循環を回し続け、本格的な「金利のある世界」に対応できる環境を整えていきたい。
日銀は2023年9月末時点で国債発行残高の約54%に当たる574兆円を保有している。黒田東彦氏の総裁就任直後の13年3月末は11・6%に過ぎなかった。日銀の異次元緩和による国債購入がいかにすさまじかったかが分かる。だが「金利のある世界」が本格到来すれば、日銀による金融緩和を目的とした国債購入が減り、政府は貴重な国債の受け皿を失いかねない。利上げに伴って国債費も増額し、財政をさらに圧迫する。
「金利のある世界」が政府に財政健全化を促すと期待したい。政府は野放図な歳出を慎み、6月をめどに策定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で実効性ある財政健全化計画を示してほしい。すでに24年度予算案では金利上昇を見越し、国債費の想定利回りを1・9%(23年度は1・1%)に17年ぶりに引き上げている。政府は経済成長に伴う税収増のみならず、歳出削減も推進して財政規律を取り戻したい。
政府は25年度に国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化を目指している。だが内閣府試算では1・3%の実質成長率を実現しても黒字化しない。他方、トランプ氏が米大統領に返り咲けば、日本は防衛費の増額を迫られかねない。財政健全化の議論は今から深めておく必要がある。
(2024/3/21 05:00)
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