産業春秋／「同意なき買収」相次ぐ

物流大手のＡＺ―ＣＯＭ丸和ホールディングス（ＨＤ）が、同業のＣ＆Ｆロジホールディングスに対しＴＯＢ（株式公開買い付け）を実施する。５月上旬にも始め、完全子会社化を目指すという。今回のＴＯＢは「同意なき買収」である。

同意なき買収は、対象企業の取締役会での賛同を得ずに行う買収で、これまで敵対的買収と呼ばれていた。ＡＺ―ＣＯＭ丸和ＨＤはアマゾンジャパン（東京都目黒区）の配送業務を受託している。ＴＯＢにより、共同配送による物流効率化やスケールメリットを期待できる。

ドライバー不足が懸念される「物流の２０２４年問題」が４月１日に迫る。物流事業者の間では、共同輸送などで協業する事例はあるが、さらに踏み込む動きがあるのか注目したい。

同意なき買収が相次ぐ。ニデックや第一生命ホールディングス（ＨＤ）に続き、ブラザー工業も業務用プリンターのローランド・ディー・ジー（ＤＧ）に買収提案している。

経済産業省は同意なき買収の行動指針で、買収する側とされる側双方の企業価値向上に資する買収提案は真摯（しんし）に検討するよう求めている。ＴＯＢの活用が産業界の新陳代謝と新たな価値の創出につながると期待したい。