社説/企業変革の新年度(上)「取り戻す30年」へ稼ぐ力強化を

(2024/4/1 05:00)

新年度を迎えた。意欲的な賃上げ、金融政策の正常化、バブル期を超えた株高は、デフレ完全脱却の機運を醸成している。だが賃金、物価、金利が継続して上昇する経済に戻るには、企業による収益基盤の一段の強化が欠かせない。生産性の向上やイノベーションに資する企業変革を怠れば、日本再生はおぼつかない。産業界はむしろ正念場を迎えたと気を引き締めたい。

日本経済の景色は確かに変わりつつある。連合によると、2024年春季労使交渉(春闘)での平均賃上げ率(2次回答集計)は5・25%と33年ぶりの高水準だ。日銀は賃金と物価の好循環を見通せると判断し、異次元金融緩和に終止符を打った。

「失われた30年」で停滞した「賃上げ、値上げ、利上げ」が動き出しつつある。海外投資家は日本企業の変化の機運を好感し、高水準の株価を支えている。日本企業はこの期待を裏切らない変革が強く求められる。

経団連の十倉雅和会長は「ぬるま湯の時代が終わった」と語る。これまで日本企業は超低金利の“ぬるま湯”に甘んじてリスクを追わず、稼ぐ力が低下した。“ゾンビ”企業も低金利で延命し、生産性を低下させた。日銀は当面「緩和的な金融環境」を継続するため急な利上げは想定されないが、「金利のある世界」となれば一段の収益基盤強化や新陳代謝を促される。企業は今から備えておきたい。

企業変革―。縮小均衡から拡大均衡への事業転換に踏み出したい。すでに日本製鉄はUSスチールの買収に動き出し、ライバル関係にあるホンダと日産自動車は電気自動車(EV)で協業する。ドラッグストアも業界1、2位が経営統合に向かう。稼ぐ力を高める事業戦略が今後も加速することが期待される。

「失われた30年」で積み上がった課題は多い。日本の22年の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国中30位。23年の国内総生産(GDP)はドルベースでドイツに抜かれて世界4位に転落した。日本経済は24年度を「取り戻す30年」の起点の年とし、新たな成長ステージに移行したい。

(2024/4/1 05:00)

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