社説/企業変革の新年度(中)中長期の視点で企業価値向上を

(2024/4/2 05:00)

改正金融商品取引法が1日から段階的に施行され、国に提出する四半期報告書が決算月に応じて順次、廃止される。短期の利益ばかりでなく、中長期の視点で企業価値を高める契機にしたい。他方、東京証券取引所が上場企業に「株価を意識した経営」を要請して1年になる。東証の趣旨と異なり、目先の株価上昇を狙った自社株買いに奔走していないか懸念される。企業は中長期の成長投資で資本効率を高める視点を併せ持ちたい。

四半期報告書が廃止され、取引所規定に基づく四半期決算短信に開示が一本化される。同報告書は企業に情報開示を促した半面、短期の株価や株主利益に目を奪われる弊害も招いた。企業は中長期で成長投資を推進し企業価値を向上させたい。今後は四半期決算短信の開示の「任意化」が課題になる。適時開示情報で代替する道を探りたい。

東証は「資本コストや株価を意識した経営」を2023年3月に上場企業に求めた。株価純資産倍率(PBR)が1倍を割る企業に資本効率の改善と改善策の開示を促している。海外投資家が日本企業の意識の変化に期待し、バブル期を超える株高を支えている一因とされる。

ただPBR改善に向け、資本コストを上回る収益率を確保するには、事業競争力を強化する必要がある。中長期の成長投資が王道であろう。自社株買いなどの株主還元にとどまらず、従業員や取引先など多様なステークホルダー(利害関係者)にも目配りするコーポレートガバナンス(企業統治)が求められる。持続的な賃上げをはじめとした人材投資や、中小企業の価格転嫁への協力も進めたい。

株式の非上場化の動きが相次く。大正製薬ホールディングス(HD)は9日、ベネッセHDは5月17日に上場廃止を予定する。上場企業は株価や株主還元など短期的利益を株主から求められる傾向が強く、上場廃止により中長期の視点で経営改革に取り組む。「物言う株主」に左右されず迅速な意思決定も可能になる。上場廃止は有力な選択肢として増加傾向が続くのか、こちらの行方も注視したい。

(2024/4/2 05:00)

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