社説/米国のウクライナ支援再開 前進も対中東・中国に課題山積

(2024/4/23 05:00)

米国によるウクライナへの軍事支援がようやく再開される。最大の支援国である米国からの武器・弾薬の供与が2023年末に途絶えて以降、ウクライナの戦況悪化が懸念されていた。民主主義陣営の結束があらためて示されたものと評価したい。ただ中東情勢の先行きは予断を許さず、5月20日には台湾の新総統が就任する。国際秩序の維持に向け、民主主義陣営はこれまで以上に結束を強化したい。

米下院は先週末、ウクライナ支援の追加予算案を超党派の賛成多数で可決した。上院での可決を経て、約610億ドル(約9・4兆円)の軍事支援が再開される。ウクライナの砲弾はロシアの10分の1に過ぎず、ロシアは5月下旬にも大規模な地上攻勢に出るとされる。ウクライナへの武器供与を急ぎたい。

共和党が過半を占める下院は米国第一を掲げるトランプ氏の影響が大きく、ウクライナ支援に消極的だ。だが国内外で高まる支援への圧力、さらにウクライナ支援の一部を融資とすることで、ようやく予算案が下院を通過した。ウクライナは低下した防空能力などを早期に立て直しロシアの攻勢に備えたい。

欧州連合(EU)は2月、今後4年間で最大500億ユーロ(約8兆円)の支援金を拠出することを決めている。日本も先週の日ウクライナ外相会談で、官民一体となった復旧・復興支援を着実に実施することを伝えた。民主主義陣営はロシアを利する支援疲れに陥ることなく、全面的な支援を継続してほしい。

他方、中国はロシアの防衛産業を支援し、新総統の就任を控えた台湾への威圧も続く。24日に訪中するブリンケン米国務長官は中国に懸念を表明しつつ、米中関係の安定化を探りたい。

中東ではイスラエルとイランの報復回避が期待されるが、イスラエルはパレスチナ自治区ガザ最南部のラファ侵攻を準備中だ。ラファにはガザ市民120万人が避難している。バイデン米政権はラファ侵攻に反対しながら、一方でイスラエルへの軍事支援を続けるなど抑止力を欠く。ラファの人道危機が憂慮され、米国の指導力が問われる。

(2024/4/23 05:00)

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