(2024/5/6 05:00)
“万緑(ばんりょく)の中や吾子(あこ)の歯生え初(そ)むる”(中村草田男)。国語の教科書で覚えた人は多かろう。みどりの日、こどもの日(立夏)と続くこの季節に思い起こされる句だ。
詠まれたのは1939年(昭14)。成長する命に初夏のエネルギーみなぎる緑が相まって、1人の親としてのピュアな喜びがあふれる。下って令和は緑も子どもも、大きく育てるには社会全体の取り組みが必要な時代となった。
戦後、住宅需要を見込んで植えられた人工林は、平成に切り時となったが、人手不足で放置面積が増えてしまった。管理されない森林は災害に弱く二酸化炭素(CO2)吸収が低下する。昨今は、増えた野生のシカに枝葉を食べられる害も広がり、防護柵が必要になっているという。
出生率は低下を続け、平成半ばから人口減少が止まらない。政府・自治体は子育てを支援する施策に力を入れるが、効果が目に見えるようになるのは30年先と言われる。
森を守るには社会が適切なコストを負担し、産業として持続可能とすること。子を生み育てるためには、金銭面で支援するだけでなく、男女さらには社会が支え合う環境を醸成することが必要だ。早く取り組めば、大きく育つのも早くなる。
(2024/5/6 05:00)