ピオニエとして 女性リーダーの気持ち／「違いと強み認め、心地よい環境を」中外製薬上席執行役員・大内香氏

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マネジャーを打診されたとき、実はとても抵抗しました。部下や組織のマネジメントには向いてないと思っていましたし、研究ができないことに意味を見いだせませんでした。当時の上司が、「管理職になることは部下の成果を一緒に喜べるということ。研究の喜びが増えるということだ」と背中を押してくれました。管理職の立場から患者さんに貢献するという視点に変わり、一歩を踏み出せました。

２０１０年は全社で女性マネジャーが約４％で、私が育薬研究部長になった１３年も、少し増えたもののまだまだ少ない状況でした。さらに、研究所の部長は長い間私だけでした。

マネジメントにおいて、自分なりのやり方や考えを見つけることが重要と思います。多様性が重視される中、性別や国籍に加え、能力に対しても多様な視点を持つようにしています。人の能力は３６０度に広がっていて強みも人それぞれです。あるスキルだけを特に評価するのではなく、違いと強みを認め、心地よい環境をつくるよう心がけています。

女性のキャリア形成は、焦らないことが大事です。これは女性自身だけでなく、組織側にも求められる視点です。出産を選択する女性はキャリアが描きにくいと感じたり、男性と同じようなペースで経験を積むことが難しいと思うかもしれません。ですが、「今は育児で仕事に全ての時間を使えなくても、仕事を続けて将来は活躍したい」と考えている女性も多いでしょう。こうした人材に対して、過去に受けられなかったリーダー研修を受けてもらい、管理職に育成するといった対応も企業に求められます。

今は管理職にも女性が増えましたが、現在、女性の役員は自分だけです。キャラクターが違う女性が２人以上いてほしいと思います。女性にもいろいろな人、意見があるということが伝わるからです。昇進に葛藤や悩みを抱えている女性には、「私が頑張ることで次の世代につながる」と考えて、挑戦してほしいです。