社説/地政学リスク(上) 劣勢ウクライナへの支援迅速に

(2024/5/8 05:00)

ロシアのプーチン大統領の就任式が7日、モスクワで行われた。通算5期目の就任で、任期は2030年。公正を欠く大統領選での圧勝はロシアの民意を反映しない。だがプーチン氏は大勝を受けてウクライナ侵略を正当化する。ロシアは核の脅威をチラつかせて欧米をけん制しつつ、夏までにウクライナに攻勢をかけるとされる。民主主義陣営は一段と警戒を強めたい。

他方、ロシアの武力による現状変更を許せば中国の台湾統一も勢い付き、東アジアの安全保障へと脅威が広がりかねない。民主主義陣営はウクライナ支援を強力に推進し、国際秩序の維持に向けた結束を強化したい。

ウクライナは武器不足で守勢に立たされている。約610億ドル(約9・4兆円)の軍事支援を盛り込んだ米国のウクライナ支援法がようやく4月24日に成立した。武器供与を急ぎたい。欧州連合(EU)は2月に今後4年で最大500億ユーロ(約8兆円)の支援金を拠出し、日本も官民一体で復旧・復興支援を支援することを決めている。これら支援も着実に進めてほしい。

ロシア国防省は6日、戦略核兵器の遂行能力を試験する軍事演習を行うと発表した。英仏の動きをけん制したものだ。キャメロン英外相は2日、ウクライナに供与した武器がロシア国内で使用されることに反対しない意向を示し、マクロン仏大統領もウクライナへの仏軍派遣の可能性を示唆した経緯がある。プーチン大統領の常套手段に屈せずロシアへの圧力を強めたい。

ロシアには北朝鮮とイランが軍事支援し、ロシア経済は中国などが支える。ロシアと中国の23年の貿易総額は過去最高を更新し、国際通貨基金(IMF)によるとロシアの24年の実質成長率は3・2%と米国を上回る見通しだ。ロシアへの効果的な制裁を講じる必要がある。

4月19日に閉幕した先進7カ国(G7)外相会合では、経済制裁で凍結したロシアの資産約3000億ドル(約46兆円)の利息をウクライナ支援に充てる対策を検討するとした。ロシアの報復は必至だが、国際法の範囲であらゆる手段を講じたい。

(2024/5/8 05:00)

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