(2024/5/21 12:00)
三菱電機の伊丹製作所(兵庫県尼崎市)で系統変電システム機器などの製造に携わってきたベテラン職人が緒方寛一氏だ。技能五輪の全国大会で優勝した経験があり、現在は若手の指導にも取り組む。仕事のこだわりや後進の育て方を聞いた。
―これまでの経歴を教えてください。
「中学卒業後、職業訓練校を経て16歳で三菱電機に入社した。当時は技能五輪の練習に明け暮れていた。6―8人の同僚と腕を競い、出場を目指した。自分は切断と溶接がそこそこできたと思う。18歳から技能五輪全国大会・構造物鉄工職種に出場し、20歳のときに全国大会で優勝した。周りからおめでとうと言われて、ようやく実感が湧いたことを今も覚えている。同世代の皆も喜んでくれた。21歳で出た国際大会では5位入賞だった」
―その後、21歳で製造現場に入りました。
「系統変電システムのガス開閉機器の溶接や板金加工に携わった。『技能五輪に出たならこれくらいできるだろう』と言われることもあったが、競技と仕事は違う。年下に教わりつつ、必死に仕事を覚えるべく働いた」
―溶接やロウ付けといった仕事にどう向き合ってきましたか。
「ポイントを少し動かすだけで溶加材や母材の溶け方などが変わる。勘やコツの世界だが、こうやればうまくいくだろうか、と常に考えていたことが血肉になった。失敗するかもしれないが、やってみて良かったということもたくさんあった」
―現在は現場仕事に加え、若手の指導にも取り組んでいます。
「技能五輪を目指す若手のコーチ役をしている。これまで10人以上を教えてきて、優勝したのはうち3人。表彰される姿を見ると本当にうれしくなる。指導の場では、一つのやり方を教えてみて、うまくいかなければ次のやり方を示す。それでもだめなら次のやり方、といろいろなパターンを引き出しながら教える。『盗んで覚えろ』はもはや通用しないが、自分の頭で考えさせることが大事だ」
(2024/5/21 12:00)
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