(2024/5/24 12:00)
昭和電気研究所(福岡市西区、河井伴文社長)は研究開発型の機器メーカー。光学、画像処理、機械設計、回路設計、音響の5分野の技術力を中核として多様な顧客ニーズに対応する幅広い製品開発が強みだ。宇宙関連では宇宙航空研究開発機構(JAXA)をはじめ、人工衛星を製造する企業をサポートする。現在、福岡市に拠点を置くQPS研究所による小型合成開口レーダー(SAR)衛星の開発・製造に協力している。
昭和電気研究所は1951年に創業。真空管やトランジスタを用いた電子回路分野から技術力と信頼を積み重ねた。現在は国内大手の重工や電機メーカー、電力会社と取引する。半導体製造装置向け計測器や繊維化学業界のノズル検査装置のODM(相手先ブランドによる設計・生産)を手がけるほか、半導体や液晶の製造工程における画像処理・検査装置では自社ブランド製品も販売する。
2000年代は、自動車レース「フォーミュラ1(F1)」の車体の電子コントロールユニットチェック装置や、レース向けオートバイ用追加燃料噴射ユニットなどを供給した。技術部の古賀圭主幹技師は「こうした経験を通じて衛星打ち上げの激しい振動に耐える配線技術のノウハウを磨いた。航空宇宙ビジネスへの参入につながった」と説明する。
宇宙産業参入の第一歩は04年で、九州大学の人工衛星開発を支援した。09年にはJAXAや九州工業大学と共同で太陽電池パネル放電現象試験装置「PASCAL」を製作。11年に米スペースシャトル「エンデバー」により国際宇宙ステーション(ISS)に運ばれ、運用された。
同年、JAXAの超小型表面電位計の開発にも協力。12年に九州工大が打ち上げた超小型衛星に同装置を搭載し、宇宙空間における半導体製造装置などの帯電状態を測定した。
13年には宇宙ステーション用補給機「こうのとり」などに採用された絶縁体電位を計測する表面電位計の開発に協力。「こうのとり」は国産大型ロケット「H2B」で打ち上げられ、電位計はISSドッキング時の放電電位差確認に使われた。
昭和電気研究所は宇宙産業を目指す北部九州を中心とした製造業の集まり「北部九州宇宙クラスター」にも参加。同クラスターのメンバーで、東京証券取引所グロース市場上場の九大発ベンチャーであるQPS研究所からも数々の実績を評価されている。同社は衛星でレーダーを使って地表を観測してデータを提供するビジネスを推進する。昭和電気研究所は衛星に搭載される太陽電池パネルや各種電源系の設計・製作をサポートしている。
QPS研究所は将来、衛星36機体制を一体的に機能させる構想で年間複数の衛星を製作して打ち上げる計画を進める。昭和電機研究所経営企画室の河井一樹室長は「QPS研究所をバックアップする事業は大きなビジネスチャンスだ。しっかり対応できる体制を構築する」と力を込める。
(2024/5/24 12:00)
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