“弱者の理論”で米国シェア獲得 マツダ社長・毛籠勝弘氏 

(2024/5/24 12:00)

出張が多く、電子書籍がなかった当時は好きな歴史書や小説などいくつかのジャンルの本を持参し、移動中に読んだ。法人営業を担当していた30代に、小規模な会社が大きな会社に勝つにはどんな戦い方をしたらいいのかを考え始め、福永雅文著『ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』を手に取った。

もともと歴史が好きだ。戦国時代の桶狭間の戦いや長篠の戦いなど、小さな戦力で大きな戦力を倒すことができた史実になぞらえて弱者がとるべき戦略が説かれており、興味深く読み進んだ。

9割の人がトヨタ自動車を知り、マツダは6割しか知られていない状況でどう戦うか。営業テリトリーや商圏を細分化し、勝てる地域に一点集中してナンバーワンを目指す「弱者の論理」をマーケティングに落とし込んだ。

企業の共済組合に入り込みPRや展示会をさせてもらう機会を得て、認知度が上がり紹介も増えた。一般市場と全く違う「職域販売」に勝ち筋を見いだした。ある製造企業向けに2カ月準備し、週末に展示会をした。従来同エリア担当の販売店が年200台を販売していたが、この時は週末の展示会だけで114台を販売できた。

北米統括会社のトップ時代に、マツダと資本関係のない現地ディーラーとも熱心に対話し、ブランド価値の周知に注力した。全米ではなく重要と定めた39市場にリソースを投入した。その結果全米でシェアが1ポイント上がり、39市場で現在5%のシェアを獲得できたのも同様の手法からだ。

5年間の欧州生活に彩りを与えてくれたのは塩野七生著『ローマ人の物語』で、文化や精神を学ぶ上でも勉強になった。私のチームは13の国籍のメンバーがいて価値観も違い、対立していては進まない。共通に目指すモノがあると創造性が発揮され、アイデアも出て素晴らしい結果につながる。長い歴史の積み重ねで辛抱強さがある。真の多様性に気づかせてくれた経験だ。

(2024/5/24 12:00)

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