(2024/5/27 12:00)
キヤノンは露光装置から生み出されるデータを活用し、半導体製造の生産性を高めるサービス「リソグラフィプラス」を展開する。半導体製造にとって露光装置の稼働率がスループット(処理能力)に直結する。同サービスはデータで露光装置の異常を検知し、自動復旧させる。装置の稼働率を高め、顧客の半導体メーカーの生産性向上に寄与する。また、デバイスごとの製造レシピを最適化するなど、露光装置のパフォーマンスを最大限引き出す。
「露光装置はビッグデータ(大量データ)の塊。装置メーカーとして、これを生かさない手はない」。キヤノン光学機器事業本部半導体機器第二PLMセンターの杉山聡上席は取り組みの意義をこう話す。露光装置は「1ロット25枚のウエハーを処理するたびに、約10ギガバイト(ギガは10億)弱のデータを吐き出す」(杉山上席)。リソグラフィプラスは、この膨大なデータを生かし露光装置の稼働率を高める。
機能の一つが異常検知だ。露光装置を常時監視し、稼働停止する前に異常を検知する。状況に応じて自動で復旧指令を送信する。人による復旧作業が必要な場合も、エラー要因を提示し、迅速な対処につなげる。キヤノンのオペレーターもリモートで装置状況を把握することが可能で、保守サービスの効率化が図れる。製造装置が稼働停止している時間を短くし、製造の生産性を高める。加えて、デバイスごとの製造レシピを最適化する機能も備える。
ただ、大手半導体メーカーは自社で製造装置などのデータを収集し、生産性を高めるシステムを開発している。キヤノンは機能向上策として、ウエハー重ね合わせ検査の時間を短縮するシステムを提供し始めている。
近年、半導体製造が複雑化し、検査箇所が増え、検査時間が延びている。加えて、ウエハー同士を貼り合わせる場合、上下のズレが起きないようにするため、チップの全数検査に近づいている。このため、検査精度を担保しながら時間の短縮が求められる。そこでキヤノンは露光装置のデータとこれまでの検査データを機械学習によって処理し、検査結果を予測するシステムを台湾の半導体メーカーと共同開発している。
現在、予測データと実際の計測データの誤差は4ナノ―6ナノメートル(ナノは10億分の1)。今後は「アルゴリズムの改良や予測に使うデータを工夫し、2ナノメートル以内の誤差に抑えたい」(杉山上席)としている。予測精度を高めながら、中規模の半導体メーカーに拡販を進める考えだ。
(2024/5/27 12:00)
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