社説/日銀きょうから決定会合 経済に配慮した「正常化」模索を

(2024/6/13 05:00)

日銀は13、14の両日、金融政策決定会合を開く。月間6兆円規模の国債買い入れを減額する方針を示すかが焦点だ。実現すれば、3月の利上げに続き、日銀のバランスシートも正常化への歩みが進むと評価したい。ただ金融引き締めは長期金利が上昇しやすくなり、企業の資金調達や消費者心理に影響しかねない。緩やかで段階的な減額とするなど、日銀には経済に配慮した慎重な政策運営を求めたい。

日銀は3月、マイナス金利政策を解除し、短期金利である政策金利を17年ぶりに引き上げたほか、長期金利の上昇を抑える長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃した。ただ市場が混乱しないよう「当面は緩和的な金融政策が続く」とし、月間6兆円規模の国債購入を続けている。

日銀は、2024年春季労使交渉(春闘)で33年ぶりの賃上げ率5%台が視野に入り、2%の物価目標を安定的に達成できる環境が整ったと判断。「金利のある世界」へと政策の軸足を移しつつある。ただ実質賃金は4月まで25カ月連続で前年同月を下回り、物価上昇に賃上げが追い付いていない。日銀は国債の買い入れを減らす「量的引き締め」を先行し、7―10月に追加利上げに動くとの見方が市場では多い。日銀は物価と賃金の好循環を慎重に見極め、金融政策の正常化に向かってほしい。

日銀は国債発行残高の過半である600兆円弱を保有する。異次元緩和による国債の大量購入は、市場機能を歪ませ、政府の財政規律も緩んだ。企業は超低金利の“ぬるま湯”に甘んじイノベーションを怠った側面もある。日銀が国債買い入れの減額に動くことで、副作用が徐々に解消していくと期待したい。

日銀が国債買い入れの減額を打ち出しても、大幅な円安是正は期待しにくい。米国経済は底堅く、インフレ再燃への警戒から利下げ時期に不透明感が増している。米国の5月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は市場予測を上回った。日米金利差が縮小せず、円安基調により日本の輸入物価が高止まりするリスクには留意したい。

(2024/6/13 05:00)

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